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シナリオの目的
皆さんは、『猿婿』という日本の昔話をご存知でしょうか。
長者の娘を嫁にもらうという約束をした猿が、娘の計略により溺れ死ぬという話です。
私は、この話に出会ったとき、昔話が持つ、シンプルながらも力強いストーリー構成に胸打たれたものです。そして、何より、猿に娘が嫁ぐという不思議。昔話には、シンプルな力強さと理不尽な不思議があります。こんな魅力的な昔話をテーブルトークのシナリオに使えないか。そう思ったのです。
本シナリオは、その第一弾としてデザインしたものです。
昔話の力強さと不思議を感じていただければ幸いです。
また、本シナリオは、プレイヤーにヒロインを傷つけるかもしれない一言を言う勇気が試されます。多くの人は、他人に嫌われたくない、そう思ってその一言を言うことをためらうでしょう。しかし、時に、その人のために苦言を呈するときも必要なものなのです。言うが優しさか、言わぬが優しさか、人として悩み苦しんでください。人とふれあい、理解し、葛藤することで、“気合”を稼いでください。≪天羅万象≫のシステムが目指す方向性の一つを向いたシナリオであると自負しております。
シナリオの概要
プレイヤーキャラクター(以後PC)たちは、ある村(GMがキャンペーン設定にあわせて自由に決定してください。単発シナリオである場合は、単に“村”で通してもかまいません)の使いから奇妙な依頼を受けます。猿婿どんに嫁ぐ長者の娘を護衛してもらいたいというのです。依頼人は、猿婿どんに嫁ぐ娘本人。娘のお末は、猿婿どんに嫁ぐにあたって万が一にもそそうがないように、もしものときに対する備えであるといいます。
ところが護衛をはじめると、お末は、PCに『死別が意味するところ』を問い掛けてきます。恐らく、ここでPCたちは、お末が何か隠しているという疑念を抱くことになるでしょう。
実は、猿婿どんは一年前に神隠しにあったお末の恋人です。恋人は、山神の呪いにより、猿となってしまったのです。お末は、その呪いを解くために、自分の生き胆を猿婿どんに食べさせようと考えています。しかも、その計画を達するためには、猿婿どんが恋人であるという事実を誰にも話してはならないのです。
プレイヤーが、お末の幸せを願うならば、まず、お末の計画・思いに気が付いてあげる必要があります。その上で、お末の計画に協力すべきなのでしょうか。馬鹿なことはやめるべきだと阻止すべきなのでしょうか。
お末の計画を阻止しようとすれば、恐らく、猿婿との戦闘になるでしょう。その後の結末は、プレイヤーがお末に気持ちにどう答えたかによります。
シナリオの流れ
大まかな流れを言えば、話の導入となる「一日目」。
次に、情報収集と因縁を回す「二日目、三日目」。
最後に、クライマックスからエンディングへの一連の流れとなる「四日目(婚礼の日)」。
大きくこの三つに分けられます。
「一日目」はおよそ一本道となりましょうが、「二日目」以降は、プレイヤーの行動により、かなり流動的となります。ここは、タイムスケジュールとして管理するよりも(時系列)、PCたちがNPCと会うことを一つのシーン(場)と考えた上でシーン管理を行うことをおすすめします(人系列)。いくつシーンを回ったかで次の日にちに移行することになるわけです。大体一日につき、5,6シーンが妥当なところでしょうか。
後、シーンを薦めるに当たっては、多少強引なぐらい、途中でぶつ切りになるぐらいで進めた方がよいと思います。その方が、一つのシーンが冗長になることもありませんし(他のプレイヤーも暇をしなくてすみます)、いきなり真相を当てられクライマックスになだれ込まれるという危険性もなくなります。なにより、プレイヤーに緊張感と興味を持続させることができます。シーンをぶつ切りにさせるテクニックとしては、彼らNPCも生活をしているということを思い出してください。厠に行く、客人が訪れる、女中が声を掛ける、単にへそを曲げた、など、話を中断する理由なんていくらでも考えられることでしょう。
アーキタイプについて
いくらかのプレイを経て、本シナリオに絡みやすいアーキタイプと絡みにくいアーキタイプがあることがわかっています。本シナリオに限らず、≪天羅万象≫をプレイする場合、シナリオに入りにくいアーキタイプがあることが多々あります。これを参考に、シナリオを作る場合にどんなアーキタイプが活躍しやすいかと考える癖をつけると、セッションがスムーズに進むようになるでしょう。
■適しているアーキタイプ
●サムライ、蟲サムライ
サムライはたいていの話で主役になれます。主役を張ってよし、脇役になってもよし。何の問題もありません。
特に本シナリオは、お末が「死ぬ」ことの意味を問い掛けてきます。サムライに限らず、戦場にその身を置くアーキタイプの因縁を刺激することは間違いないでしょう。
『一番大切なものの死』を刺激して、お末への恋愛感情を持たせるまでになれば、まず成功です。
●ヨロイ狩り
サムライが本命とすれば、ヨロイ狩りは対抗馬といったところでしょうか。戦場にその身を置くアーキタイプでありながら、精神はもっとも未熟な存在です。ヨロイ狩りがお末の『死別が意味するところ』に、どのように答えるか、シナリオを解く鍵の一つとなりましょう。
■適していないアーキタイプ
●傀儡、戦闘用傀儡、姫
因縁上は特に問題ありませんが(むしろ積極的に推進したいくらいです)、彼女らの特殊能力≪胡蝶の夢≫が、シナリオを崩壊させるだけの力を秘めています。
本シナリオは、『しゃべるなのタブー』という仕掛けが施されています。これはしゃべるなというだけで、知られるなというものではありません。そのため、≪胡蝶の夢≫によってシナリオ最大の仕掛けをあっさりと突破されかねません。
どうしてもやりたいというプレイヤーがいれば、≪胡蝶の夢≫の使用を禁止するのが無難でしょう。
●金剛機
暗殺が任務の金剛機に、ただの村人が護衛を依頼するのでしょうか。
●ヨロイ乗り、無宿
良家の子息が、果たして一介の村人の依頼を受けるのでしょうか。
それはともかくとしても、シナリオの性質上、ほとんどのシーンをヨロイから降りてすごすことになるでしょう。自分のヨロイにかかわるロールプレイばかりしていると、話に参加できなくなる可能性があります。
●鬼法師、鬼サムライ
化け物扱いされているオニに、ただの村人が護衛を依頼するでしょうか。屋敷の中を歩くにしても、不適切な存在です。
また、オニの因縁は内に篭りやすく、シナリオに絡みにくいということも問題となります。
鍵となる因縁
■『お末に対する感情』
感情の中身は基本的に問いませんが、やはり同情心や恋愛感情などが無難でしょう。あるいは、単純な興味も時に面白い展開を見せてくれます。とにかく、PCのうち一人はお末に対する好意的な心情を抱いてくれないと、シナリオ進行に障害が生じることになります。
■『一番大切なものの死』
困ったときは、『一番大切なものの死』。応用範囲が広いところが魅力でしょうか。
■『弱者に対する憐れみ』『強さへの憧れ』
ここで面白いのは、プレイヤーがお末を弱者と見るか、強者と見るかです。一番面白いのは、お末を強者ろ見た上で、それがシナリオ終盤、偽りの強さであったということが露見したときでしょう。お末を強者と見て敬意を表していたPCのとまどい、憤りは、一つの見物だと思います。
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