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シナリオの目的
ヒロイックファンタジー。その言葉を聞いたとき、みなさんは何を連想されることでしょうか。コナン、エルリック…名作と呼ばれるお話はたくさんあるでしょうが、私は何よりも先に、アーサー王伝説をはじめとした中世騎士道物語の数々を思い出します。元々ヒロイックファンタジーとは、神話を持たないアメリカにおいて開発された一つの構築世界であり、ケルト神話や北欧神話の伝説をベースに、そこに同じく両神話をベースとした中世騎士道物語で語られるロマンスを取り入れたジャンルだからです。
ところで、中世騎士道物語といえば、何よりも忘れてはいけないものがあります。アーサー王で言えば、モリガン・ル・フェをはじめとした「湖の貴婦人」たち。いわゆる妖精たちです。騎士の多くが妖精から助言を受け、困難な試練を乗り越えています。中世騎士道物語とは、同時にフェアリー・テール、妖精譚でもあるのです。
今回は、そんなフェアリー・テールを用意してみました。
シナリオタイトルは『人魚姫』。もちろんモチーフは、アンデルセン童話『人魚姫』です。一人の美しき海妖精が、人間の青年に恋したが故に引き起こされる悲喜劇。とてもありふれた、フェアリー・テールです。これもまた、ヒロイックファンタジーなのです。
シナリオの概要
今から一年と少し前のことです。嵐の中、今まさに沈まんとする船の上から物語がはじまります。高波に浚われる危険を省みず、必至に船を御さんと命令を飛ばす偉丈夫な青年、オクトレッド・カーライル。
しかし、オクトレッドの奮闘もむなしく、船はまっぷたつに割れ、オクトレッドは海に投げ出されます。
そんなオクトレッドを助けたのが、海妖精(人魚)の少女、アナスタシア。濡れ髪と産毛が愛らしい少女です。はじめは、オクトレッドを妖精特有の好奇心で助けただけのアナスタシアも、オクトレッドの気高さ、美しさに胸打たれ、すっかりと恋をしてしまいました。とはいえ、己は所詮海妖精。叶わぬ恋と思い、オクトレッドに見られる前にその身を隠してしまいました。
波打ち際に置かれたオクトレッドを助けたのが、本シナリオのもう一人のヒロイン、クレア・サークレット。オクトレッドは心優しきクレアに恋し、クレアもまたオクトレッドに恋しました。
一方、アナスタシアは、オクトレッドへの恋が募ります。もう一度お会いしたい、できれば結ばれたい。そんなアナスタシアの想いは、ついに禁断の扉を開けてしまいます。海妖精の爪弾き者、魔女のヴィヴィアン。アナスタシアは、聖痕を喰らうという“殺戮者”に、人間になる魔法を掛けて貰うことにしたのです。ヴィヴィアンは“契約”の対価としてアナスタシアの喉にある聖痕、フィニスを頂戴することにしました。結果、アナスタシアは声を失うことになります。ヴィヴィアンは言います。
「一年、一年だよ。後一年の間に、あんたの王子様の心を己のものにできなければ、魔法は解けてしまうだろう。そうなれば、己は泡となって消えてしまう。魂の欠片すら、残りはしない。神にすら見放されるのさ。それでも…いいかい?」アナスタシアはオクトレッドの付き人として仕えることになりました。オクトレッドも、この物言わぬ、慎ましやかで良く気の利く少女をすっかりと気に入ります。
シナリオの流れ
シナリオは、以下の流れに沿って進行します。
導入ステージ(シーン1〜6)○
お話の導入。
シナリオタイトルと合わせて、ここでPLたちにシナリオの流れの大部分を予想させることを目的としています。逆に言えば、本シナリオは、シナリオの筋をPLたちに読ませてからが本当の勝負です。
展開ステージ(シーン7〜15)○
“刻まれし者”たちとゲストたちとの交流。
ここでは、“刻まれし者”たちの間でアナスタシアの処遇を巡り、マルチゲームさながらの対立が生じると思います。GMは、PLたちが知力を尽くして演じる駆け引きを見て楽しんでください。
対決ステージ(シーン16)○
展開ステージで溜まったPLたちのフラストレーションが、ここで爆発します。思いっきり暴れ回りましょう。
終局ステージ(シーン17)○
宴の終わりです。
ここでアナスタシアの成長が見られるかどうかは、“刻まれし者”たちの頑張り次第です。
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