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登場人物
■アナスタシア 海妖精の少女
「………(うなずく)」
アナスタシアは、オクトレッドの付き人です。
外見年齢は16といったところでしょうか。濡れ髪と産毛が愛らしい海妖精の少女です。物言わぬ、慎ましやかで良く気の利く少女です。小さい胸に少々のコンプレックスを抱いているようです。元は美声を誇っていましたが、今はその声を魔女ヴィヴィアンに奪われています。代わりに今は、すらりとした美脚を誇りにしています。
アナスタシアは主人のオクトレッドに恋しています。
クレアとは女の友情で結ばれていますが、婚姻の儀を三日後に控え、その友情にも暗い影が差し込んでいます。
現在、アナスタシアは口が利けません。
アナスタシアはかつて文盲でしたが、必至の勉強の甲斐あって、今では詰まりながらも簡単な文なら書けます。アナスタシアは、ここ二ヶ月ほど、練習もかねて日記を書いています。
※シナリオにおける立場
ヒロインです。
このままPCたちが事態を静観すれば、アナスタシアは、間違いなくオクトレッドとクレアとを刺し殺します。そしてアナスタシアは、己の罪深さに驚愕し、愛するオクトレッドの後を追うことでしょう。この結末を止められるのは“刻まれし者”たちのみです。
データは、サンプルキャラクターの「湖の貴婦人」に準じます。
ただし、今現在アナスタシアは、フェニスの聖痕を失っています。結果、フェニスの奇跡と特技を使用できません。
言葉が話せないということで、どのように演技すればよいのか見当がつかないGMもおいででしょう。
しかし、そう難しく考えることはありません。
単純に、「〜という感じの・と訊きたげな表情をするよ」といってくださってかまいません。
【コラム】ケルトの悲しき海妖精
この固有名詞は私が勝手に付けたものです。
海妖精とは、人魚をはじめ、海に住む妖精すべてを意味します。良いヤツもいれば、悪いヤツもいます。美しい女性の場合もあれば、醜い獣の場合もあります。
そんな海妖精の中で、「悲しき」という形容詞がつく存在と言えば、筆頭はやはり人魚でしょう。北欧の「人魚伝説」は、日本の「羽衣伝説」とも比較されます。日本の天女と同じく、その人でない美しさ故に、人と結ばれ、人でないが故に、元居るべき所に帰らなければならない。その本意にかかわらず、元居るところに帰らなければ「ならない」。そこに人間の理屈が働く余地などありません。帰らねばならないから、帰るだけなのです。これぞまさに、「悲しき」存在です。
重ねて、GMに忠告しておきます。
妖精たちに人間の理屈を持ち込まないでください。人の自由意思や理論など、妖精の世界では毛ほどの意味も持ちません。帰らねばならないから、帰るだけです。そこに理屈や理論などありません。不思議でしょう。理不尽でしょう。不条理でしょう。絶対に正しいはずがないでしょう。そうです。「人間社会においては」それは正しいはずがありません。理不尽で、不条理で、不思議なのです。しかし、その不条理こそが、まさにフェアリー・テールであり、「本当の」ファンタジーなのです。本シナリオの鍵は、まさにこの理不尽さ不条理さにあります。「本当の」ファンタジーをお楽しみください。
■オクトレッド・カーライル 勇ましき好青年
「ああ、アナスタシアもそろそろ適齢期だからな。良い相手を捜してあげないといかんな」
オクトレッドは、海の覇王カーライル男爵の長男です。
今年で23歳になります。オクトレッド自身も、戦乙女ヴァリキリーが勇者と認めヴァルハラに連れていきたくなるような偉丈夫です。勇敢な海の戦士にして、博学なる青年。誰からも好かれるような好人物、それがオクトレッド・カーライルという人物なのです。
愛する婚約者のクレアと結婚する予定です。
一人称は「私」、二人称は「何々卿」「何々殿」です。
※シナリオにおける立場
実は、端役です。オクトレッドは本シナリオでは被害者にすぎず、協力者とはなり得ません。ここを誤解すると、シナリオの結末は悲劇を迎えることになります。
データは、サンプルキャラクターの「ヴァルハラの勇者」に準じます。
■クレア・サークレット 朗らかな女性
「ありがとう。アナスタシアに言ってもらえれば、お墨付きね」
クレアは、遠国のサークレット子爵の一人娘です。
年は二十歳。短めの赤毛で、きりりとした眉とぱっちりとした瞳が印象的な美人です。大きな胸を自慢にしています。いつも楽しげで、朗らかな女性です。好人物オクトレッドとは、誰もが祝福するような取り合わせです。ただ一人、アナスタシアを除いて。
一人称は「あたし」。二人称は「何々卿」「何々殿」、親しくなれば「あなた」です。
※シナリオにおける立場
もう一人のヒロイン、クレアです。
クレアは、アナスタシアのオクトレッドに対する恋心に気が付いています。そんなアナスタシアを見て、クレアも心を痛めていますが、自分もまたオクトレッドに恋している以上、これだけは譲れません。クレアは、アナスタシアを慰めようと、あの手この手を尽くしています。しかし、そのたびに見せるアナスタシアの悲しげな視線に心を痛めています。そして同時に、アナスタシアの悲しげな視線にかすかな優越感を感じ取っています。この、クレアの心遣い・優越感が、シナリオをよけいにややこしくしています。
データは、サンプルキャラクターの「戦乙女」ヴァリキリーに準じます。
■“深き海の魔女”ヴィヴィアン
「“契約”の内容はこれで良いね?じゃあ、アナスタシア。ここにあんたの自筆を入れるんだ。…何?字が書けない?仕方ないねえ。あんたの本名をお言い、あたしが代筆してあげるから」
大きな鷲鼻に刺すような眼光、しわがれた肌に極端に曲がった腰、その小さな肢体からはまがまがしいオーラを放っています。ヴィヴィアンは、まさに魔女と呼ぶにふさわしい存在です。
ヴィヴィアンは、その卓越した魔導によって人々の欲望を叶えてきました。そしてヴィヴィアンは、契約の「正当な」対価として、依頼人のもっとも大切なものを奪ってきました。ヴィヴィアンは契約を弄し、聖痕を奪ってきたのです。
今回の依頼人は、海妖精の少女アナスタシアです。アナスタシアは人間のオクトレッドに恋をしています。ヴィヴィアンはアナスタシアと契約を結び、ヴィヴィアンはアナスタシアに人間化の魔法をかけました。アナスタシアは、その対価として「アナスタシアの声=喉の聖痕フィニス」をいただきました。後一年の間にオクトレッドの心をアナスタシアのものにできなければ、アナスタシアは泡となって消えてしまう運命にありますが、これは魔法の“代償”であって、決して“契約”の“対価”ではありません(この違いは注意しておいてください)。ここまでは、正当な契約です。
しかし、ヴィヴィアンは卓越した占い師でもあります。ヴィヴィアンはアナスタシアの運命。決して、オクトレッドの愛を得られないであろうことを知っていました。オクトレッドとクレアとが恋に落ちることも見抜いていました。その上で、ヴィヴィアンは、アナスタシアと契約を結んだのです。
一人称は「あたし」、二人称は「あんた」「己」です。
※シナリオにおける立場
倒すべき“殺戮者”です。
ヴィヴィアンは、シナリオ開始前に、一つの選択肢をアナスタシアに与えました。
それが、一本の、正真正銘、何処にでもある“ただの”短剣です。
「よおくお聞き、アナスタシア。“契約”の文言は『我が意中の人の心を己のものにできぬ時は、私、アナスタシアは』だったよね。そこでだ、あんたに一つチャンスをやろう。この短剣で、オクトレッドとクレアとを刺し殺すんだ。なに、難しいことじゃないさ。ちょいと力を込めれば、ほうれ、この通り、ぶすりといくんだ。いいかい。アナスタシア。この“契約”は、愛すべきオクトレッドの心をものにできる可能性を前提に結ばれているんだ。だから、その前提である可能性自体、断ち切るんだ。そうすれば、契約はその前提を失う。契約は無効になるのさ。ああ、クレアも殺すことを忘れるんじゃあないよ。オクトレッドの心は、今やその一部をクレアが握っている。クレアも殺さないと、オクトレッドの心はこの世に残っちまうことになる。きれいさっぱり、オクトレッドの心をこの世に残さないことが肝心さ。いいかい、アナスタシア。あたしは、あんたのためを思って忠告してあげてるんだ。はじめに“契約”をしたときも、そうだろう?あたしは、いつもあんたのことを思ってるんだよ」
誤解の無いように言っておきますが、このヴィヴィアンの言葉に何一つ偽りはありません。ヴィヴィアンは人の弱みにつけ込んだり、レトリックを弄したりはしますが、“契約”に関しては決して嘘をついたりしません。ヴィヴィアンの言うとおりに実行すれば、間違いなく契約は無効になります。アナスタシアは泡となって消える運命から逃れることができるのです。
しかし、ヴィヴィアンはその後の結末を知っています。アナスタシアは、己の罪深さに驚愕し、間違いなく、愛するオクトレッドの後を追うことでしょう。斯くしてヴィヴィアンは、労せずして聖痕を九つも手に入れることになるのです。
■リーン アナスタシアの姉
「特に、海妖精と人間との間では、絶望的ね」
アナスタシアの姉です。アナスタシアに似て、濡れ髪が美しい海妖精です。海妖精特有の色気を醸し出している女性です。
一人称は「わたし」、二人称は「あなた」です。
※シナリオにおける立場
エキストラであるリーンの役割は、基本的には三つ。
一つは、PCの一人に、アナスタシアの探索を依頼する役割。
一つは、アナスタシアを説得する材料として。
一つは、展開フェイズにおけるGMからの情報提供・情報整理。特に、妖精と“契約”に対する基礎知識の提供。
そして、隠された役割が、“契約”を無効化するための秘策をもたらすことです。
■“フェアリードクター”ケット 人なつっこい青年
「そいつは難題です。契約はすでに履行されています」
人なつっこい感じの若きフェアリードクター。二十歳前後といったところでしょうか。
いつもにこにことしており、人の相談に真摯に対応してくれる好人物です。
一人称は「ボク」。二人称は「何々卿」「何々様」、親しくなれば「キミ」です。
※シナリオにおける立場
フェアリードクターとは、妖精博士。すなわち、妖精を見ることが出来、妖精に対抗する様々な手段知識を蓄えた、対妖精のプロフェッショナルです(中世においては一般的な存在です)。GMは、PLたちが妖精譚や神話・伝説になれていないと判断したときは、ケットを活用して適宜シナリオのヒント(特に、妖精と“契約”に対する基礎知識)を与えてください。いざとなれば、立ち聞きしたと、シーンに突然割り込んでもかまいません。リーンとの因縁がない“刻まれし者”にとっては、重要な情報源となります。
ケットはエキストラです。ケットが“刻まれし者”たちに提供するのは知識のみです。実行するのはあくまで“刻まれし者”たちであることを、お忘れなく。
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