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まず、議論を展開するに当たって、議論の対象であるところの神業を定義しましょう。
神業とは、N◎VAシステム上のキャラクターたちの、常人では不可能な、傍若無人な離れ技を意味します(128頁)。
(1) それぞれのスタイルに対応した神業がある。では、このように特徴的な神業とは、一体どのように解釈されるべきなのでしょうか。
(2) 神業は1アクトに自分のスタイルの数と同じだけの回数を使用できる。
(3) 神業は使うと宣言するだけで成功する。
(4) 神業の使い方に関する具体的な内容はPLが考え、RLがその神業の範疇に入る内容だと判断すれば、効果を発揮する。
(5) 神業は他のすべての結果を凌駕する。決定的成功よりも序列が上である。
(6) 神業の使用はすべての状況に優先する。(神業最優先の原則)
(7) 神業に対抗するには、その効果を打ち消すような神業を用いるしかない。
(8) 神業を「うまく使う」とPLに経験点が入る。
2.スタイルに殉じる(趣旨)
ところで、みなさんは神業ルールが何故N◎VAに存在するのか、そのことを考えたことがあるでしょうか。
よく考えてみると、一見では何故N◎VAに神業のルールがあるのかその理由が不明だとは思いませんか。
実を言えば、私もはじめ(1st)のとき、何故神業のルールが存在するのか、よく解っていませんでした。N◎VAとは本来、サイバーパンクRPGだったのではないのか。だとすれば、神業ルールは悪のりしすぎである。そう考えたことすらありました。当時、N◎VAは私にとって、大嫌いなシステムの一つでした。
これは、当時の私の好みの問題もありましたが、そのこと以上に、私がN◎VAが目指すところを誤解していたことが大きかったと思います。
その誤解を解いたのが、ゲーマーズフィールド初期に連載されていた2ndのN◎VAのリプレイでした。
現在手元にないので確認が不可能なのですが、石槌が和泉指令に対して≪真実≫を使い事件の真相を聞き出そうとしたのに対し、和泉が≪完全偽装≫でその真相を闇に葬り去るというやりとりがリプレイにありました。ここで私は、石槌は何処までも私立探偵らしく、和泉指令は何処までも国家の犬らしいということに初めて気が付いたのです。しかも、それをPLの技量に頼ることなく、ルールによって見事に表現していたのです。これは、私にとって一つの革命でした。
では、N◎VAの神業ルールの趣旨・目的とは、一体いかなるものなのでしょうか。
その答えが、神業の特徴(1)(2)です。
これは、「スタイルに対応した特徴的な神業」を「見せ場として」行使することが許されていることを意味します。
その具体的に意味するところは、神業がスタイルに対応していること。これは必然的に個々の神業が特徴的な存在であることを意味します。その神業は他の神業にない特徴を兼ね備えていると言うことです。結果、その特徴的な神業の行使は特徴的であり、そのキャスト・ゲストのスタイルを再認識させることでしょう。ですので、神業の行使は、その神業が特徴的であるが故に、神業を行使したキャラクターのスタイルを再認識させます。
その神業の行使はスタイルにつき一回だけ行使できます。これは、そのスタイルにとって「見せ場」であることを意味します。
さて、少々回りくどい言い方になりました。
結論だけを言えば、神業ルールの趣旨は、「キャラクターのスタイルを特徴づけるためにある」ということです。
これは、「スタイルに対応した特徴的な神業」を「見せ場として」行使することが許されているからです。
また、「(8)神業を『うまく使う』とPLに経験点が入る」という効果からもそれなりに納得できることでしょう。なぜなら、「スタイルを貫き通すこと」こそPLの勝利条件の一つであり、その報酬として経験点が与えられるからです(146頁)。
スタイルに殉じ、スタイルに死す。これがN◎VAの神業ルールの目指すところでありましょう。
3.神業の発動(要件)
神業は宣言するだけで効果を発揮します。ここはそれほど争いがあるところではありません。
4.逐次処理同時適用の原則(効果)
逐次処理同時適用の原則とは、「順番に処理する、神業を同時に使われたら、その効果は同時に適用する」ことです(エクリプス43頁)。逐次処理同時適用の原則は、更に逐次処理の原則と同時適用の原則とに分けられます。
逐次処理の原則とは、順番に処理することです。
この逐次処理の原則は、(3)神業は使うと宣言するだけで成功することの具体的現れと考えてよいでしょう。
神業は使うと宣言するだけで効果を発揮し、カット進行時のアクションランクといった通常の順番すら無視します。ただ、そうはいっても、同時に神業を宣言したときにどんな順番で処理すべきか、その指針が必要とされましょう。RLも神ではない以上、業務の処理は順番に為さねば処理しきれないからです。そこで、逐次に処理する、逐次処理の原則が出てきました。これは、宣言だけで成功する神業の処理としては、ある意味至極当然の結果とも言えます。この処理の仕方については、エクリプスが出る前から多くのRLが当然のように採用していたものと推察できます。
問題は、同時適用の原則の方です。
同時適用の原則とは、神業が同時に宣言されたときに、その効果を同時に適用することです。
多くのRLがエクリプスを手に取ったときに、同時適用の原則について衝撃を受けたものでしょう(とか考えたのですが、同時適用の話題に触れたログが、LOG19【99年05月17日:20時31分47秒】のえんど氏の発言が初めてであったのには、びっくり)。従来の2ndが採用していた“神業は後出しが勝ち”の鉄則とは、根本的にルーリングを異にします。
では、何故、2ndから[R]に移行するに当たって、このような大規模なルール改変が行われたのでしょうか。
また、同時適用の原則の趣旨とは、一体いかなるものなのでしょうか。
その答えは、「『2nd』を知る人へのメッセージ」にあります(エクリプス43頁)。
同時適用の原則の趣旨とは、“神業は後出しが勝ち”の鉄則の撤廃。すなわち、神業を後出ししても有利とは限らないと言うことの明示にあります。これは、神業を後出しさせることをそもそも防ぐことにあるのだと思います。そのことによって、神業を前倒しに行使させる。神業の積極行使にその趣旨があるのだと思います。
従って、同時適用の原則の趣旨は、後出し有利による神業の出し惜しみ防止にある、と考えます。そしてその結果、神業をクライマックス前により積極的に行使させる、そのモチベーションを上昇させることを趣旨としているのだと思います。
このルーリングが、実は私のN◎VA観(シナリオ作成、セッションプレイ)に大きな影響を与えているのですが、それはまた後日(8.9.)。
次に、ここで「同時適用」とは、何を意味するのでしょうか。私は、以下のように再定義しました。
「発動要件が一旦満たされた以上は、その神業の効果は、神業による打ち消しが行われない限り、何人たりとも邪魔されない。結果、神業を同時に使われたら、その効果は同時に適用することになる」この解釈は、後出し有利防止の趣旨に基づきます。
ところで、この再定義には一つ問題点があります。
「発動要件が一旦満たされた以上」。この一文が意味するところが一体いかなるものか、このような一文を私が何故、加えたかです。LOG33【99年09月30日:13時35分57秒】のArtbasil氏の疑問はここにあるのです。
Artbasil氏は以下のように私に疑問をぶつけてきました。
2.それに対して、tatuyaさんは神業の「逐次処理同時適用の原則」から《天変地異》による打ち消しはできないとしました。「逐次処理同時適用の原則」の「同時適用」とは「発動要件が一旦満たされた以上は、その神業の結果は、神業による打ち消しが行われない限り、何人たりとも邪魔されない」ということだそうです。このことから「神業の打ち消しとは、互いの神業の『効果』が矛盾することを意味する」ということが言えるそうです(ここの流れは、私は良く理解できませんでいますが)。実を言えば、同時適用の原則においてその趣旨を後出し有利防止に求めたとしても、「発動要件が一旦満たされた以上」という一文を再定義の中に入れる必然はありません。後出しが有利になることを防止するには、本来、神業が同時に効果を発揮するのであれば十分だからです。すなわち、神業の処理として、2ndのようなTCG的な割り込み処理でなく、神業が同時に効果を発揮するという形で処理をされれば十分である、という考え方もまた可能なのです(というより、その方が自然な流れなのでしょう)。2ndのTCG的な割り込み処理となれば、≪死の舞踏≫に対し、その≪死の舞踏≫を行使したキャラクターを≪とどめの一撃≫で殺すことで、事実上、神業の行使を阻害することが可能となります。2ndの場合、[R]でいう神業の打ち消しと異なり(エクリプス43頁「打ち消した場合、打ち消し以外の効果はない」)、後に宣言した≪とどめの一撃≫によって、先に宣言された≪死の舞踏≫は事実上キャンセルされる結果となるのです。このような、神業の後出しによる神業の事実上のキャンセルを防ぐには、神業を同時に適用すれば十分ということになるわけです。それが、Artbasil氏の言う「ここの流れは、私は良く理解できませんでいますが」にあらわれているのでしょう。
しかし、私は更にその一歩先を考えます。
「では、神業の打ち消しについての指針は一体何処に求めるべきなのであろうか」その答えこそが、「発動要件が一旦満たされた以上」という私が追加した一文なのです。
以上から、私は同時適用の原則は、神業を適用するときの原則であると同時に、神業を打ち消すときのための原則であると考えます。
では、何故私は「発動要件が一旦満たされた以上」という一文を追加したのでしょうか。
それは、(6)神業の使用はすべての状況に優先するからです。一度神業の行使を宣言した以上は(すなわち神業が発動要件を満たした以上は)、(7)その効果を打ち消すような神業を行使するまで優先的な処理を施すべきだからです。ここで打ち消しとは、2ndと異なり、神業の発動を事実上否定するようなものであってはいけません。あくまでも、神業の打ち消しとは、神業の「効果」を阻害するものであって、神業の「要件」を阻害するものであってはいけないのです。
例えば、≪天変地異≫を使って≪死の舞踏≫の打ち消しを試みる場合、多くは、刀筋を突風によってそらす、といった演出をすることになるでしょう。しかしこの様な処理は、突風を発生させるという≪天変地異≫を先に処理することによって、≪死の舞踏≫の「<メレー>用の武器の届く範囲」という発動要件を阻害するものです。これは≪死の舞踏≫が効果を発揮する前に、≪天変地異≫の効果を発揮させている処理なのです。そうではなく、神業がもたらす「結果は、」同時に処理しなければなりません。これが、私が考える同時適用の原則であり、「発動要件が一旦満たされた以上」という一文を追加した根拠なのです。
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