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●シナリオにおける立場
本シナリオの中心であり、悲劇のヒロインです。
彼女の思いに気が付いて始めてシナリオにドラマが生まれるといっても過言ではありません。お末をどれくらい生き生きと表現したかによって、シナリオの面白さが決まるでしょう。思いっきりプレイヤーと絡ませてください。
●経歴と秘密
彼女には、恋人がいました。名を麻馬(あさま)といいます。麻馬は、一年前に神隠しに遭っています。その日、お末と麻馬は一緒に裏山(長者どんが難儀した山です)に山菜取りに行きました。そこで二人は、おいしそうな木の実(昔話では、よく梨が登場します)が豊かに実った大木を見つけました。ところが、実はその大木は山神の大木で、その実を食らう者を猿にする呪いがかかっていたのです。
お末は麻馬に木の実を取ってくれるようにねだりました。麻馬はその実をもぎ取り、毒見といって一口かじってしまいました。そして、猿になったのです。そのとき山鳥は歌ったものです。
「ちゅん、ちゅん、ちゅんお末は猿になった麻馬を見て、決意しました。己の命に代えても麻馬の呪いを解こうと。
山神の木の実は呪いの木の実
呪われちゃったらお猿になった
あの娘は呪いを解こうと右往左往
だけど誰にもしゃべれない
何故って?しゃべっちゃったら呪いは解けないものだから」
●外見
16歳になる、黒髪の美少女です。その瞳には、常に憂いと不安を浮かべています。身長は150cmくらいで、小柄です。
●因縁
その他:誰にも語れない秘密(上級)
目的:死別が意味するところを知る(中級)
感情:術法への興味(初級)
●ロールプレイのヒント
彼女には、『誰にも語れない秘密』があります。山鳥が歌ったように、山神の呪いを誰かに話せば、麻馬の呪いを解くという目的が達成できなくなります。昔話では、主人公は不用意な一言ですべての幸運を失うことがあります。『しゃべるなのタブー』とでも呼びましょう。これだけは、お末にとって絶対に譲れないラインです。
しかし、彼女が護衛を望んだという意味をよく考えてください。彼女は『生き胆を差し出す=死ぬ』という事実を恐れています。本当は死にたくない。自分を助けてくれる存在が出てくるのを望んでいます。だからこそ、護衛という名目で、よそ者のPCたちを招いたのです。藁にもすがるとはこのことです。PCが問いただせば、自分の計画につき「はい」「いいえ」ぐらいの受け答えはします(これくらいなら、しゃべるなのタブーに反したとはいいません)。また、展開によっては、喩え話によって、自分の計画を匂わせたりします。
『死別が意味するところを知る』も『術法への興味』も、右のような彼女の甘えの現れです。GMは、これらを活用して、PCたちと積極的にコミュニケーションを取ってください。表向きの依頼が護衛である以上、PCたちはNPCとの会話を望まない危険性があります。『死別が意味するところを知る』でサムライなど戦場にその身を置くキャラクターの因縁を、『術法への興味』で法師など術法使いの因縁をそれぞれ刺激してください。これは、GMの責任です。
もう一点、本シナリオをプレイするに当たって、重要なポイントが存在します。因縁に『麻馬への愛情』がないことです。結論から言えば、お末は猿婿どんとなった現在の麻馬を愛してはいません。お末は確かに麻馬を猿にしてしまった負い目を感じています。麻馬の呪いを解いて、できれば麻馬と結ばれたいと考えています。しかし、猿のままの麻馬とは結ばれたいとは考えません。お末だって人の子です。人でないものに対する純粋な嫌悪を持ち合わせています。酷なようですが猿婿どんは所詮猿なのです。人でないものとは決して結ばれない。これは『猿婿』に限らず、日本の動物婚をテーマにした昔話のほとんどに共通することです。『田螺長者』も結局、田螺長者が人になったからこそ結ばれたのです。例外といえば、『サンショウウオ女房』ぐらいでしょうか。
冒頭の「だって…サル、じゃない」というつぶやきは、そんなお末の偽らざる心情なのです。
●人称の使い方
自分のことは「すえ」。
他人には「何々さま」。
長者どんのことは「おとうさま」。
お長、お次のことは「おねえさま」。
猿婿どんのことは「猿婿どの」。
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