評論するって楽でいいなぁ

執筆:黒緒泰哲


疑問点・問題点


1.お繕にとっての障害は「理不尽さ」でよいのか?

「理不尽さ」という障害は微妙である。
彼女がする「母お鶴」もまた、「理不尽」な存在なのだから。
彼女が目指す「昔話」の世界というのは「理不尽」なものなのだから。

ついでに「理不尽」について、十文字俊明のセリフの意味を少し解説しておこう。あのセリフは俊明が陰陽師だったからでたセリフ。あの場合の「理不尽」の意味は
「理がき果て無い」
ということ。

これには私が考える陰陽師のものの考え方が反映されている。私は陰陽師は「理詰めで物事を考える」タイプの人間だと考えた。(「お前もな」というツッコミはさておき)「理詰めで考えて理解する」とは、「理屈を積み重ねていって物事を説明する」ことであり、「理解する」その境地は「理が尽き果てる」その瞬間でもある。

従って、「理が尽き果て無い」とは「理解できない」ことを表わす。私は彼等みたいなタイプの人間にとって「理解できないこと」というのは「理由が思い当たらない」ということではなく、「いくら突き詰めていっても理由で説明できないこと」なのではないかと考えたのだ。

また、陰陽師とはその「理解できないこと」(主には天地自然の現象、則ち「天万象」だろうが)に理由を求めている人間であろうと私は思う。だから「理不尽なもの」は彼にとっての「追求対象」であろうと考えた。この考えの裏には常に「理屈で説明できないことはない」という考えがある。実際には理屈で説明できないむこうにこそ「理不尽なもの」があるのだろうが。

話を元に戻そう。

ヒロインは「不思議」の世界を目指している。それは間違いないことである。するとやはり彼女の前に立ちふさがるのは「現実」ではなかろうか?そう、「厳しい現実」というやつである。山道は物理的にそうだし、山賊というのもある意味そうと言える。

2.ドラマ作りの機会が少なくないか?

プレイヤーがドラマを作れる機会が少なくないか?
マスターが考えたテーマをプレイヤー達は感じ取ることができるのか?
新たなるドラマがまれる余地はあるのか?

先ずヒロインに対してのスタンスを「好意的」にするためのロールプレイが難しい。キャラの設定的には十二分に力的なんだけど、これをロールプレイで伝えるのは至難の技である。もうすこしシーンを練り上げた方がいいと思う。

一本道なシナリオだからというのもある。PCが作りやすいドラマというのは PC、キャラクター、雰囲気等によってその都度変わってくる筈である。しかし現在のシナリオでは、そういった分岐に対応しきれないと思う。

もし分岐を嫌うのであれば、マスターが望むドラマをもっと前面に打ち出さないとつらいと思う。現状は、例えば
「不条理」「母子」「姉弟」「現実と不思議」「種族を越えた
などがテーマとなりうる。このようにテーマとなりうるものが多いわりに(というか因縁がかめば何でもテーマですがね)、シナリオで対応しているテーマが少ない。これは問題である。

私の好みから言わせてもらえるならば
「ある程度の分岐に対応しろ」
ということになる。本来的に「押し付けるのが嫌い」というのもあるが、天羅のシナリオにはそういった柔軟性があった方が面白いと思う。で、私はアドリブが苦手なので設定で対処する、と。(従ってアドリブで対処するのも一法である)

3.全体的な評価・総括。
はじまりはたった一つのアイデアからだった。
一度ストーリーは完結した。
そして物語は進化しつづける。

何やら批判ばかりしてきたけど、全体としては
「ええ話になったなぁ」
ってところですか。いや、少なくとも私が演ったときよりは話がまとまってるし…。ストーリーとしてはよくまとまっています。いいんじゃあないでしょうか?ただ逆にストーリーとしてのまとまりが、シナリオの柔軟性を奪っている気がしますね。



あなたなーらどうするぅ?私ならこうする


主に「シナリオにこういう点を付け加えたらどうか?」という観点から書かれているためこれだけでは不完全です。適宜元のシナリオに摘要して下さい。

あ、あとシナリオの組み方が俺様的なので向かないかも知れない(笑)




1.物語の場の設定

(静かに) 昔話をしましょう。 久遠のを経て語られる、 遠い遠い異国のお話。 時に己の過去のに打ち震え、 時に哀しい因縁に玩具の様にばれ、 そうして拭いえぬ宿業を背負いながら、 その定めに抗って生きた人間のお話。 大切な何かを失った、忘れてしまいたいその情景が、 何の因果か、また繰返される。 ききった心を潤そうと、西に東にさまよい歩く。 そうした人々が、因縁あって回り逢い、織り上げたお話。 昔話をしましょう。 遥かな過去に生きた彼らが静かに眠れるように。 彼らの活躍する、遠い遠い異国のお話を…。

●天羅はプレイヤーに演出の多くを依存する構造である。従って「如何にプレイヤーを世界に引きずり込むか」もまた、重要な要素であろうと考えて付けてみた。
上記は例えである。因みに世界の説明も少しした気になっている。

2.冒頭部分に一工夫

シーン1「口入屋」(名前は適当に付けてね)
PCはここでお繕の警護を斡旋されます。非協力的になりがちなアーキタイプは、 最初からここにいることにしてしまうのが吉でしょう。(とりあえず町を素通りされない)いっそのこと全員ここに居ることにしてしまってもよいですね。

PCの一人にスポットを当て、入口近くで鉢合わせ、巻き込まれる、という手もありますし、(その他の人はそこにいる)さらに理想的なPCであれば、個々に訪ねてきて出会いのシーンを演じることもできるわけです。(まあしい期待ですが)

●この「口入屋」は私のストーリー改修において重要な役割を果たします。店の主は如何にも世慣れた、それでいてどい感じを演出してください。
「浮浪人では格好がつきませんねぇ、名うての用心棒って事にしておきますか。」
「そんなちゃらちゃらした格好ではどうにも…もうちょっとこう、腰の物を…そうそう、ぐっと見栄えがよくなった。」
「まあ、あたしにまかせて下さいよ、うまくまとめてみせますから。」

シーン2「鶴屋」

PC達は一部屋で待たされます。「口入屋」の主だけが、先ず「鶴屋」の主と商談を行うのです。(ここでお繕にインパクトのある登場シーンを与えましょう。)

PCが待っている部屋の襖は開いたままになっています。そこから外を眺めると、入り口から続く廊下と、子供の遊ぶ庭が広がっています。
ふと、奥の方から足音が近づいてきます。足音の主はお繕です。(お繕の描写は任せた!)
少女は廊下を曲がった所、ちょうど部屋からよく見えるところ(ポイント)で足を止め、庭で遊ぶ子供たちに見入ってます。そんな彼女の前に偶然、毬がころころと転がってきます。彼女は一瞬ためらいますが、毬を拾うとそれを追い駆けてきた女の子に差し出します。
しかし、毬を差し出された女の子は舌を出して彼女の好意をみます。(別に「あっかんべー」と表現してもいいんですが情緒が…同様に「いーだ」でも可ですよ、もちろん。ただ「そんなのいらないもん」とか声を上げるのはダメですよ)彼女は一瞬硬直しますが、毬を胸のあたりまで持ち上げ「ふんっだ」とばかりにそっぽを向いてしまいます。
当然の事ながら女の子は泣き出してしまいます。
そこで年配の婦人が「まあまあどうしたの」といいながら現れます。
女の子は「おせんがまりとったあぁ」と訴えます。(後々の展開を柔軟にするため「おせんねえ」でなく「おせん」です)
すると年配の婦人はお繕に向かって 「なにやってるのお繕!子供からものを取り上げるなんて!!お姉さんなのに!」
「それは…」
「口答えしないの!!」
(ここら辺は勢いが重要です。情景描写を挟まずに!)
と、一方的にお繕を叱りつけます。(ちょっとPCの表情を確認し、ここでどこまでお繕をいじめるか考えましょう)

「謝りなさい」
「え?」

(分岐1:PCがもう十分に同情的である場合:お繕の「勝ち気」さを強調)
  「毬を取り上げてごめんなさいって謝りなさい」
  (ポイント:一応事実であり、彼女が少女に対して罪悪感を抱いている点でもある)
  しかしお繕は黙って毬を少女に突っ返すと庭を廊下沿いに向うの方へと走って行ってしまう。
  婦人も「あっ、こら、待ちなさいお繕!」と言って彼女の後を追います。

(分岐2:PCにまだ同情の色が見られない場合:お繕の「愛の枯渇」を強調)
  「悪い事したのだから謝りなさい」
  (ポイント:一方的に「お繕が悪い」と決め付ける)
  そう言われるとお繕はいきなり毬を遠くへと放り投げてしまう。
  「うえええぇぇぇん」さらに大きな声で泣き出す少女。

  (分岐2−1:PCが同情的なら引き際です)
    そしてお繕は庭を廊下沿いに向うの方へと走って行ってしまう。
    婦人も「あっ、こら、待ちなさいお繕!」と言って彼女の後を追います。

  (分岐2−2:PCが未だ同情的でないならもう一押入れましょう)
    パチン!
    婦人はいきなりお繕の頬を叩く。大きな音が庭中に響き渡ります。
    お繕と婦人はしばらくみ合って、
    「謝りなさい」婦人は静かに繰返します。
    しかしお繕はそのまま何も言わずに庭を廊下沿いに向うの方へと
    走って行ってしまう。

    (分岐2−2−1:もう十分に同情的ですね)
      婦人は「待ちなさい」と言うが、泣きく少女を放ってはおけず
      「もう、しょうがないんだから」といいながら少女を宥めはじめます。

    (分岐2−2−2:まだ同情的でないなら止めを刺しておきましょう)
      婦人は「待ちなさい」と言うが、泣き喚く少女を放ってはおけず
      お繕に聞こえよがしに
     「まったく、いくら言ってもこうなんですから、所詮畜生の子は畜生なのね」
     と吐き捨てます。

●お繕の登場シーンに工夫を凝らしてみました。
特に留意すべきはヒロインのめ方ですね。勝気なんだけど実は、という設定を活かすにはそれ相応のシーンが必要です。個人的には2−2−2へと分岐する位苛めぬいてもいいかな?って気もしますが…(駄目駄目人間第弐號)まあ、その場の雰囲気に合わせましょう。

少女に「おせん」と言わせるのは細かいようで重要です。「普段は慕われている」のであれば喧嘩的な台詞として扱えると同時に「子供にまでまれている」という路線を用意できます。

継母の立場も微妙に変化させましょう。もっとも苛めぬいたパターン以外では、
「平等に接しているつもりなんだけど、やっぱり実子との間で差別してしまう」
という母としてのスタンスを残せます。これはPCに
「あれでもお母さん、あなたのことを愛しているのよ」
というような台詞を残します。もっとも、返事は「分ってるわよっ」で決定ですが。

最後に太郎の設定を2つ用意します。
分りやすくするために、「優しい太郎」と「嫌な太郎」とでも分類します。(別にかっこいい太郎とパンスト太郎でもいいんですが)
「優しい太郎」の設定は今のままの太郎です。
「嫌な太郎」は「物怪の母」に好奇心で会いにいく嫌な奴です。当然の事ながら継母の愛を一身に受けており、軟弱で、我が儘です。彼は道々お繕を苦しめる為に存在します。「優しい太郎」と同じように演じていて下さい。でもいい子のふりをしているだけです。
例えば山道ではPCにせがんでおんぶしてもらいますね。そして前を歩くお繕が疲れてきた頃に声を掛けるのです。
「ねえさま、大丈夫?ねえさまもおぶってもらったら?」
この場合、彼は彼女がそう言われれば、むしろ「うん」とは言えないことを分かっていてそう言うのです。「うるさい」とでも答ましょう。
でも、PCには中盤以降、お繕と話ができるようになった後で、心配そうに声をかけながら、だけどその目が笑っていることを見抜いてもらいましょうね。

3.ハイライトシーンの変化

最初丸一日はお繕を歩かせましょう。PCの様子見もありますが、いかにPCが忍ばかりでもお繕の足跡が残ります。

吊り橋のシーンではお繕を最初に突っ込ませます。その結果、橋を落とされ死にそうな目に会うのです。PCが危険だと言って先に渡った場合には危難はPCに及びます。敵の狙いは味方が追いつく為の足止め工作です。

厳しい現実という意味では、泉のシーンを混ぜましょう。疲れた一行がある泉の側にさしかかります。お繕は「ふう」と一息入れ、水を飲もうとします。判定して下さい。成功すれば人の白骨が木陰に転がっているのを見付けるでしょう。そして水の中に生き物がいないことを。
この時点で「嫌な太郎」になっていた場合には彼に飲ませてしまって、「その晩うなされる太郎をそれでもなお必死に介護するお繕」というしいシーンを折り込んでもいいでしょう。

山賊の襲撃はハイライトにしましょう。そしてある例外(後述)を除いては黒幕は口入屋の主です。キーワードは「世の中金がすべて」と「これが現実だ」です。
また、ここはハイライトです。これまでに如何にマスターが努力しても、プレイヤーがお繕に対して「いや、自分のキャラクターはそんな生易しい逆境には心動かされない」とかドラマづくりを拒んできたのであれば、彼女を更に残な逆境に追い込みましょう。
まず、彼女は人質に捕られていますね。PCと襲撃者達が相対したら口入屋にこう言わせましょう。
「よし、ぼうずをこっちによこせ。ぼうずを捕って「鶴屋」を強請れば大金をせしめられるが、こいつじゃあ役に立たん。…まあ、みてくれはそんなでもないから売れれば多少の金にはなるが?」
(手下「い」が突っ込む)
「いや、物の怪の子だけに見せ物にした方が儲かるんじゃあないっすか」
(一同笑う)
彼等の会話の意味は分りますか?これは「鶴屋に彼女の居場所はない」ことそれどころか「都中に彼女が物の怪の子として知れている」事をも意味しているのです。
しかし、こんなことで挫けていては勝気なヒロインはつとまりません。ここはマスターもぐっと唇をんで堪え、
「太郎!逃げなさい!こいつ等の話を聞いたでしょ!!あなたは鶴屋の大事な跡取りなのよっ!だから…だからっ!早く逃げなさいよっ!」 (最後の台詞あたりは半ば涙声になる位がグー)
とでも絶叫しましょう。
しかし、まだちょっと足りません。よりドラマを演出する為に追打ちをかけましょう。
太郎に「分かった、お前達、逃げるぞ」と即答させます。
ここまでやれば完璧です(超絶駄目駄目人間)。この状況を前にして「ドラマが足りない」とは誰も言わないでしょう。あとのドラマはPCに任せます。

このパターンにまで踏み込んでしまうと、彼女を立ち直らせるのは至難の技です。こんなラストは私も考えたくありません。
でもね、この展開になるって事は、PCは自分もまたそういった、あるいはそれ以上の重荷を背負って生きている筈ですね。それならば、彼女に掛けてやる言葉も当然持っている筈ですよね?
なお、ほんとに逃げ出したりしたら、マスターの怒りの制裁で、構わず潰してあげましょう。敵としては金剛機の20騎編隊位がお薦めです(はあと)

4.ドラマはどう分岐するか?

PCの話の振りは予想しきれません。しかし、普通に物語が進行した場合の最後は、魔法の終りとお繕の去就です。すると、気をつけるべきドラマは、「お繕が人間界を離れられない何か」であると考えられます。それは何でしょう?
あるPCはそれを「兄弟」にしたいかもしれません。或いは「恋人」?又は「強く生きること」?「母」?「友」?「生きなければならない何か」は何でもいいのです。それこそPCの数だけ解答があるでしょう。しかし、そうした中でも「兄弟」や「恋人」といった主要なモチーフは押さえておかねばなりません。

「兄弟」であれば話は簡単ですね。彼女には彼女の事を慕う兄弟「優しい太郎」がいるのですから。ここで重要なのは、「優しい太郎」も「嫌な太郎」も物語の方向性が定まるまでは同じキャラクターでよいという点です。二人の違いはよいこのふりをしているか本当にそうなのか、の違いでしかないからです。
PCがよく頑張ってあと一息なんだけど説得できそうにないときは、太郎に
「ねえさん、ねえさん、どこいっちゃうんだよぅ。ねえさんのいない鶴屋は寂しすぎるよ。一緒に帰ろうよ」
とでも言わせて下さい。ラストは仲良く歩く兄弟の図で完璧です。

「恋人」は難しいですがありえなくはありません。候補は二人いるので彼女の境遇が確定するまで語るのは止めて、
「でも、好きな人とかいるんでしょ?」といった質問には
「…うん、…ちょっとね、…好き、ってわけじゃあないんだけど…」
とか振って次に何と聞かれても
「あ、あなたには関係ないでしょ!」とか答えておきましょう。
で、その恋人ですが、決定するのは彼女の境遇です。

彼女の境遇が比較的よく、目安としては「優しい太郎」だった場合婚約者がいます。彼は近くの都の呉服問屋「鶴屋」の息子で、たまたま名前が同じだからとの理由から「鶴屋」と懇意になりました。
彼は彼女にぞっこんれ込んでます。プレイが順調に進んだ場合、お繕が母に語るのは彼との結婚でしょう。母は何と言って娘を送りだすのでしょうね?その言葉はPCが知る由もありません。別れのシーンでお繕の耳もとでそっと何事かささやいてあげてください。そして人間の姿のまま送りだしてあげましょう。

また、やや行き詰まり、彼女が鶴と化すことになり、それでもPCがよく頑張ってあと一息なんだけど説得できそうにない場合には彼が登場します。口入屋の動きに気付いて、後を追ってきたのです。
そして鶴と化したお繕に向かってまっすぐ歩み寄り
「お繕?お繕なのかい?…分るよ、たとえどんな姿になっても。…でも、帰って来てくれないか?私の許に」
とでも言って下さい。ラストは将来の話、名品を豊富に扱う通好みの呉服屋「鶴屋」の繁昌話しで締めくくって下さい。

彼女の境遇が悪く、目安としては導入部で2-2-2に行ったとか、PCが冷めまくっているので太郎を「嫌な太郎」として、PCの同情・関心をひく必要が出てきた場合には、彼女がれているのは店に出入りする若い職人の一人です。
彼は朴訥で誠実で真面目な男です。関係者の中では唯一人、継母の前でもお繕の事を「お繕じょうさま」とよんでしまう位です。(当然継母からは睨まれてます。)物は苦手ですが、キメの細やかな反物をじっくりと織り上げる職人です。
PCが外道なりによく頑張ってあと一息なんだけど説得できそうにない場合には彼が登場します。口入屋の主に
「いえね、このままじゃああまりにお繕ちゃんが可哀相でね…。ほら、××!何やってんだ!」とか言わせてから、登場して下さい。
そして、ぽつりぽつりと、でもはっきりと
「お繕じょうさま…いえ、お繕さん。どこかへ行ってしまうなら、俺と…俺と一緒に行きませんか?…いい暮らしは…できませんが、…でもあなたを困らせるようなことはしません。…それに、…楽しいと思うんです。お繕さんと…あなたと二人なら」とでも言って下さい。
ラストは口入屋の主が連れてきた男達に押えられ「こんなことが許されるとおもってるのか!?」とか言いながら、家まで送り届けられていく嫌な太郎を見送り、また、新しい生活を求めて去っていく二人を見送り、そして「さて、ここまでやっちゃああたしもあの都じゃ生活できない。どこへいくかまだ決めてませんので、あなた達と同道させてもらってもよろしいですかね」とか言いながら勝手についてくる口入屋の主と、そうして旅に出るPCを見守る鶴一羽で完璧でしょう。
口入屋が黒幕でなく「いいやつ」になるのはこのパターン位です。注意していて下さい、PC達が冷め切っていてそれでも数少ないPC達のお繕に対するアプローチが「恋人」だったら口入屋は「いいやつ」になります。その場合の黒幕は純粋に山賊でいいでしょう。

あと、二つ重要なモチーフを明記しておきます。それは「約束」と「強く生きること」です。

「約束」は卑怯と言えば卑怯な手です。
でも、母に会う前に、誰とでもいいですから「一緒に帰ろうね」とか約束されたらどうします。そしたらもう、母に「約束は守らなければいけません。守れるわよね?お母さんの子だものね?」とかさとされて、「うん」とか涙ぐみながら答えるしかないじゃあないですか(笑)。

後者はある意味、最後の訴えです。鶴となって飛び去ろうとするお繕に向かって「このまま、負けっぱなしで逃げちまうのかよっ!!」とか絶叫されたらどうします?シーン的に、そのまま飛び去らせてその後で森の中から物音を立てて表れて、照れながら「ありがとう」とか言うしかないじゃあないですか(爆)。

母は死ななくてもいいんです。彼女が母の許を目指す理由だって何だっていいんです。それがドラマチックになれば…。

ハッピーエンドも幾つもあります。PCが彼女を幸せにしようとしたら、そして自分の生き方をぶつけてドラマを作ったなら、彼女は幸せになれる。僕は天羅はそういう運びがいいと思います。

私が提示したのは、「パターン」でしかありません。こういう場合にはやはりこうしたいという、ストーリーです。腕のいいマスターならこれくらいアドリブでこなすんでしょうね。でも、私はアドリブが苦手なので、ここらへんまでは一応設定する。ただ、それだけのことです。