「モンテギュールの翼」 シナリオの前提  本シナリオは3人のプレイヤー(以後、PL)を対象に、プレイ時間は4〜5時間を想定しています。シナリオの舞台は、ゲームマスター(以後、GM)のキャンペーン設定に応じて、設定してください。  このシナリオは、サプリメント『LAND of The GUILTY』に対応しています。  このシナリオで使用する因果律は以下の通りです。 006:背を向けた白鳥 042:沈黙の守護者 091:魔印  また、予め、以下の因縁が“刻まれし者”(アルカナで、プレイヤーキャラクター、PCを意味します)たちに与えられます。 006:“変わり者”ウィーヴィル、“魔印” 042:クラリッサ、“背を向けた白鳥” 091:“闇の御子”アリサ、“沈黙の守護者” シナリオの目的 ●ストーリーの主題  異端とは………なんですか? ●システム上の意図  登場判定に依存したシナリオ構造です。  PLは、登場判定を用いてより積極的にシナリオに絡む必要があります。その点だけ、気を付けてください。GMは、PLがシーンに介入し易いよう、ゲストを積極的に用いシーンをコントロールする必要があります。例えば、“背を向けた白鳥”のシーンにアリサを登場させ、“魔印”の登場を促すなどです。 シナリオの概要  “刻まれし者”たちは川沿いの植民都市モンテギュールに立ち寄ります。“沈黙の守護者”は異端討伐という任務を胸に秘め、“背を向けた白鳥”は姉ウィーヴィルに誘われ、“魔印”は旅の途中に。モンテギュールでは三つの再会がなされます。“沈黙の守護者”はシスター・クラリッサに、“背を向けた白鳥”はウィーヴィルに、“魔印”は姉アリサに。  “沈黙の守護者”は、街のあちこちで異端のあかしを見つけます。  “魔印”はウィーヴィルに誘いを受ける一方、姉アリサの動向が気にかかるところでしょう。“背を向けた白鳥”は、そんな“魔印”とウィーヴィルとの仲が気にかかります。  選択を迫られる“沈黙の守護者”。  そして、アリサは、嫉妬のあまりメアリ司祭を謀ります。  転生したクラリッサは問いかけます。 「異端とは………なんですか?」  メアリ司祭の軍が異端の街モンテギュールを囲んだそのとき、“刻まれし者”たちは最後の決断を迫られます。  なお、シナリオの期間は特に決まっていません。一週間の物語かもしれませんし、一月の物語かもしれません。 シナリオの真相  白鳥人“変わり者”ウィーヴィルは、モンテギュールにおいて司祭の役職を勤めています。モンテギュールは、天使ブリキュリッテ信仰が盛んであり、異端的な気風を持った街です。モンテギュールは、ウィーヴィルにとってとても面白い魂で満ちあふれています。だからこそ、ウィーヴィルはモンテギュールが気に入ったのです。  そこに紛れ込んできたのが“魔印”。ウィーヴィルは“魔印”の健気な素振りにすっかり惚れ込みます。  弟かわいさのあまりアリサはウィーヴィルに嫉妬し、メアリ司祭を謀りました。その結果、有力な中継都市として新たに台頭してきたモンテギュールが目障りな都市トゥルースと異端撲滅を誓うメアリ司祭との利害・思惑が一致します。  メアリ司祭は軍を動かし、異端の街モンテギュールを取り囲むのです。  シナリオの舞台はボーニュ地方の歴史がある植民都市モンテギュールです。人口は600人ほど。よくある小都市の一つです。モンテギュール建設は、真教布教のためこの地に植民してきた真教徒に天使ブリキュリッテが“モンテギュールの翼”という奇跡を授けたことに由来します。故に、モンテギュールでは天使ブリキュリッテ信仰が盛んであり、聖職者は畏敬の念を持って迎えられます。  なお、結論から言えば、モンテギュールの天使ブリキュリッテは聖人崇拝の域を出ていません。  しかし、そこは中世という時代。天使ガブリエルが人気のあまり破門されたという歴史もあるのです。 登場人物 ■“変わり者”ウィーヴィル 白鳥人 「ようこそ、“天使の翼に抱かれた街”モンテギュールに」  “背を向けた白鳥”の姉。  変わり者ウィーヴィル。個性派揃いの白鳥人の中で、ウィーヴィルはひときわ変わり者です。雄々しき戦士ではなく、英雄を手助けする王女や助言者たる賢者、大魔法使いなど、ウィーヴィルが父アーグリフに捧げる英雄の魂は変わったものばかりです。  その変わり者であるが故に、ウィーヴィルはアーグリフのお気に入りの一人です。  ミロのヴィーナスのような肉欲的なスタイルをしています。そのスタイルの通り、ウィーヴィルは精力的・活動的な女性です。まさに、異教における理想的な女性像でしょう。  性格のよさとその美貌故、ウィーヴィルは、司祭として女性として街の人気者です。少々ドジだけれども、その明るい性格故、女性にも人気があります。 ※シナリオにおける立場  英雄を誑かす悪い魔女です。ウィーヴィルはシナリオの毒となります。  そして、倒すべき“殺戮者”です。 ※演出する際のポイント  翻弄する女。白鳥人でありながら敵対する教えである真教の教会に出入りをし、あまつさえ司祭として真教の教えを民衆に説いています。その変わり者ぶりが伺われるでしょう。  今回は、魔印を持ちながらも魔印の誘惑に逆らう、実にいじらしい英雄(“魔印”)の魂を狙っています。  ウィーヴィルは、クラリッサと同じ教会に所属しています。ウィーヴィルにとってクラリッサは愛らしいおもちゃであり、最大級の愛情を注ぐべき対象です。  一人称は「私」。二人称は「貴方」「何々様」です。 ■クラリッサ 女性 「異端とは………なんですか?」  その雰囲気はほんわかとして牧歌的です。都会の女性のような洗練された雰囲気はありませんが、優しげな雰囲気は見る者の心を和ませます。毎日の個人的な祈りを欠かさない敬虔なシスターです。 ※シナリオにおける立場  問いかける者、救いを求める者。異端の宿命を受けた者。  倒すべき“殺戮者”になる可能性を秘めています。 ※演出する際のポイント  シーン1に登場したクラリッサが転生した女性です。  中道を愛する女性。争いを避け、融和を求める心優しき女性です。優柔不断ともいいます。  教徒たちが異端・異教の教えを重視するのであればそれを尊重します。信仰とは、あくまで民衆のものです。神の愛は無限です。  だからこそ、クラリッサは偶像崇拝という誤りを犯してしまいました。  クラリッサは、対決ステージ直前になるまで、己の前世を思い出すことは基本的にありません。ミニアの件も、風の噂程度でしか話を聞いていないでしょう。  クラリッサは、ウィーヴィルと同じ教会に所属しています。クラリッサは、司祭であるウィーヴィルをとても尊敬しています。理想の司祭像(女性像)とも考えているでしょう。  一人称は「わたし」。二人称は「何々さん」、親しくなれば「何々」です。 ■“闇の御子”アリサ 女性 「おひさしぶり、ご機嫌麗しくて? …ああ、ご機嫌は麗しいはずですわよね?」  “魔印”の姉。  『LAND of The GUILTY』294頁参照。 ※シナリオにおける立場  助言者にして妨害者。 ※演出する際のポイント  アリサが目指すものは、神をも凌ぐことです。  魔神すら、神をも凌ぐ手段に過ぎないと考えています。  闇の鎖に囚われた己に救いがないことを理解し、魔神は己の魂をむさぼり喰らうことしか考えていないことをも理解しています。己が救われるにはただ、神をも凌ぐ神になるしかないでしょう。  故に、アリサは弟に対して、その盲を優しく説き伏せようとするでしょう。正しき知恵こそ、アリサが求め、弟に望むことなのです。  弟には優しいアリサですが、その本質は魔女です。  弟が他の女性と仲良くしている現場を目撃すれば極端な嫉妬をするでしょう。まずは、弟と女にきつい皮肉をぶつけ、優しく窘めてあげてください。それでも二人の中が改善しないのであれば実力行使をすべき時です。女に、一億の絶望を与えてあげましょう。  一人称は「あたし」「お姉さん」。二人称は「あなた」「何々」です。 ■メアリ司祭 女性 「すべて殺しなさい。神は神のものを知りたまいます」  “沈黙の守護者”の理解者にして協力者。もちろん、“沈黙の守護者”が聖グラディウシア騎士団員であることは知りません。  誇り高き貴婦人。貴族の娘であり、一族を代表して神の傍らに席を設けています。  四、五〇代ですが、若い頃はさぞ美人だったでしょう。貴族的な気高さの中に慈愛をたたえた、司祭の中の司祭です。  ボーニュ地方の有力者の一人です。メアリが一声かければ、軍隊を動かすことすら容易です。  三枚の翼を組み合わせた印を紋章としています。 ※シナリオにおける立場  エキストラです。 ※演出する際のポイント  理性的な女性です。落ち着き払い、気高さの中に慈愛をたたえた、貴婦人の中の貴婦人です。  敬虔な真教徒であり、神の教えを実現するためであればためらいを覚えません。異端は滅ぼされるべきです。なぜならば、異端は救いようがない存在だからです(なんと理性的な判断でしょう!)。  一人称は「わたくし」。二人称は「そなた」「何々卿」、親しくなれば「あなた」です。 導入ステージ  このシナリオにおいては、導入シーンにおいてシーンプレイヤー以外の登場を禁止します。 シーン1:異端の定義 ●シーンの目的  “沈黙の守護者”の導入。シナリオの主題の提示。  シーンプレイヤーは“沈黙の守護者”です。 ●進行  山間の小さな村ミニア。平和な村がいままさに焼き尽くされ、破壊の限りを尽くされ、灰塵に帰そうとしています。“沈黙の守護者”は村の中心にある小さな教会の聖堂にいます。  教会のシスターがなにかを抱え、うずくまっています。小さなおとこのこ。胸から血を流し、とっくの昔に生き絶えています。  “沈黙の守護者”の手には、血が滴る剣(つるぎ)。故意か過失かは定かではありませんが、“沈黙の守護者”のその剣が少年を刺し貫いたことは間違いない事実です。  シスターは、“沈黙の守護者”を睨みつけます。目にはいっぱいの涙を浮かべて。その泣きざまは、目が潰れんばかりの勢いです。クラリッサというのが、シスターの名前。クラリッサは“沈黙の守護者”に問いかけます。泣きながら。 「異端とは………なんですか?」  翼を模した紋章がはためきます。紋章旗が炎の熱気に煽られ、誇らしげにはためきます。 「ごくろうさまです。あなたの活躍で異端は滅ぼされました」  メアリ司祭は“沈黙の守護者”に対し威厳の中に慈愛をたたえて話しかけます。 「この地方(ボーニュ地方)には、昔から有翼の魔神をアーの下僕として祀る異端信仰が盛んなのです。わたくしが初めてこちらに赴任したときはその数の多さに驚いたくらいです。でも、これもきっと大いなる母と教皇庁とがわたくしに与えたもうた試練なのでしょう」  そう言って、メアリ司祭は“沈黙の守護者”にとびっきりの笑顔を見せます。  いまから、二年前の出来事でした。 ■ このシーンが何年前であるかは、本質的な問題ではありません。GMの好きなように設定してください。  なお、クラリッサの転生は年数に左右されません。転生とは、魂の問題なのです(「魂は時間には縛られない(83頁)」)。 シーン2:異端の都市(まち) ●シーンの目的  “沈黙の守護者”とクラリッサとの再会。  シーンプレイヤーは“沈黙の守護者”です。 ●進行  “沈黙の守護者”はボーニュ地方では歴史があるモンテギュールという川沿いの植民都市に立ち寄っています。  “沈黙の守護者”が聖グラディウシア騎士団からモンテギュールに派遣された理由は当然、異端の征伐です。  “沈黙の守護者”がモンテギュールに赴く前にボーニュ地方の盟主たる都市トゥルース(モンテギュールとは徒歩で二日ほどの距離にあります)に立ち寄ったとき、“沈黙の守護者”の理解者にして協力者であるメアリ司祭は“沈黙の守護者”に忠告を発しました。  ボーニュ地方では昔から有翼の魔神を神の下僕としてあがめる異端信仰が盛んであり、その中でも最大の勢力を誇るのが都市モンテギュールであるという疑いが強い。モンテギュールに入れば、周りは神の敵だらけであるが故、気を付ける必要がある。  モンテギュールは川沿いの中継都市ということもあり、人の出入りは激しく、とても活気があふれる街です。陰鬱な気分など奇麗さっぱりと吹き飛びそうなその街で、“沈黙の守護者”はまずは中央の教会に足を運ぶことでしょう(足を運んでください)。夕日を浴び、教会の影が長く伸びます。  “沈黙の守護者”のそばを少年が一人駆け抜けます。 「シスター・クラリッサ、さよーならー!」  少年は一度、後ろを振り返り、教会に向かって思いっきり手を振ります。  “沈黙の守護者”が教会の方を向くと、教会の前では一人のシスターが少年に手を振っています。  シスターは“沈黙の守護者”に気が付き、手を降ろし、話しかけます。 「旅の騎士様ですか? このような薄汚い教会に、いかなるご用向きで?」  クラリッサと呼ばれたシスターは、なんとも使い慣れていない敬語で“沈黙の守護者”に声を掛けます。  ………同じでした。あまりに全てが同じでした。二年前、ミニアの村でクラリッサと初めて出会ったときと。長く伸びる影法師、駆け抜ける少年、クラリッサという名前、台詞、口調、声、顔、すべてが。 シーン3:異教徒たち ●シーンの目的  “背を向けた白鳥”とウィーヴィルとの再会。  シーンプレイヤーは“背を向けた白鳥”です。 ●進行  敗北。“背を向けた白鳥”は、かつてない敗北に見舞われます。  地べたにはいつくばり、立つことも、転がることも叶わず、ただ、あえぐだけです。  “背を向けた白鳥”を見下すのは三人の女性。三人とも、美しい白い翼を生やした白鳥人。“背を向けた白鳥”の姉たちです。 「ふふ、愚かな娘。お父様に逆らおうだなんて。お父様に二度と逆らえないよう、翼をもいでしまおうかしら?」 「それとも、喉を潰してしまおうかしら?」 「いえ、お姉さま、男を誑かす奇麗なお顔を潰してさしあげましょう?」  ほほほ、と上品に笑うのは、三人の姉です。  そこに、声がかかります。 「おやめなさい、お姉さま方。そのようなことをして、お父様がお喜びになられると?」 「…“変わり者”! あなた、一体どんな権利があって…!」 「お父様は、姉妹同士の争いを好みませんわよ?」  ………  薄れ行く意識の中、“変わり者”と呼ばれた白鳥人は、“背を向けた白鳥”の頬を両の手でいとおしげに撫で、心配そうにつぶやきます。 「大丈夫、何々? 私よ、ウィーヴィルよ、分かる?」 「可哀想そうな“背を向けた白鳥”。こんなに傷だらけになって…」  そこで、“背を向けた白鳥”の意識は途絶えます。 シーン4:天使の翼 ●シーンの目的  “天使の翼に抱かれた街”モンテギュールの紹介。“魔印”とウィーヴィルとの出会い、“魔印”とアリサとの再会。  シーンプレイヤーは“魔印”です。 ●進行  “魔印”は、ボーニュ地方の古き植民都市、モンテギュールを訪れています。  ボーニュ地方はかつて蛮族が支配していた土地であり、モンテギュールは真教布教と同時に植民者が植民を開始した都市の一つです。植民時代の名残か、モンテギュールには遺跡のような城壁がいまも残っています。“モンテギュールの翼”と呼ばれるその城壁は、門を中心に左右対称に伸び、川を背に、都市を包み込むような形をしています。ある詩人は都市モンテギュールを見て“天使の翼に抱かれた街”と謡ったそうです。  美しい城壁に感嘆の情を抱きつつ門をくぐった“魔印”に、一つのトラブルが降りかかります。 「とっととっと…っと、ど、どいてください!」  と言いきる間もなく、一人の女性が“魔印”にぶつかります。散らばる大量の食料品。どうやら、女性は買い物袋で前が見えず、“魔印”にぶつかったようです。 「あつつ…」  尻餅をつき、目を回している女性がそこにいます。 「あっちゃー、また、ウィーヴィル様じゃないか…」  そう言って、街の人々が“魔印”たちの方に駆け寄ってきます。  ウィーヴィルと呼ばれた女性をよく見てみれば、司祭服にその身を包んでいます。  若く、活動的で、実に精力的・魅力的な女性です。  “魔印”がウィーヴィルに声を掛ければ「どうもすみません」と気恥ずかしそうに平謝りし、立ち去ります。あるいは、“魔印”はウィーヴィルの荷物を持って教会まで同行するかもしれません。  どちらにしても、“魔印”がウィーヴィルと別れたところで、後ろから醒めた声がかかります。 「だらしない…鼻の下を伸ばして…」  振り返ると、そこには見覚えがある女性が立っています。アリサ。“魔印”の姉です。 「おひさしぶり、ご機嫌麗しくて? …ああ、ご機嫌は麗しいはずですわよね?」  いつも通りにこやかに話しかけるアリサですが、今日はなにやらご機嫌斜めです。にこやかな笑顔の裏にはピリピリした感情が見え隠れしています。 「お姉さんからの忠告。あの女、気を付けた方がいいわ」 「女の勘よ」  “魔印”は、アリサに質問するでしょう。適当に答えてあげてください。  アリサがモンテギュールを訪れたのは、ただの偶然です。ただ、そこで思いがけない旧友(ウィーヴィル)と“魔印”とに再会をはたしたのです。  暫く話し込んだのち、アリサは「ごきげんよう」と言って“魔印”と別れます。  別れる際、ふと、思い出して立ち止まり、“魔印”に声を掛けます。 「あたしも、この街に暫く滞在するつもりだから、気が向いたらあたしの処に立ち寄って。ね、お願い、いいでしょう? たまには、お姉さんの言うことも聞いてね?」  アリサは、“魔印”に投げキスを一つして別れます。 シーン5:羽ばたき ●シーンの目的  “背を向けた白鳥”とウィーヴィルとの再会。序章の幕引きと物語の幕開け。  シーンプレイヤーは“背を向けた白鳥”です。 ●進行  “背を向けた白鳥”は教会の鐘の音で目が覚めます。  起きてみるとベットの上。 「ごきげんよう、“背を向けた白鳥”? 良い夢は見られた?」  “背を向けた白鳥”に声がかかります。声の主の方を振り向くと、そこには女性が一人。  真教の司祭服にその身を包んだ………ウィーヴィル、“背を向けた白鳥”の姉です。“背を向けた白鳥”は、ウィーヴィルの通り名、“変わり者”という呼び名を思い出すことでしょう。 「貴方はね、“背を向けた白鳥”、とっても似ているのよ、私と」  ウィーヴィルはそう言って、窓の方に歩み寄り、窓の手すりに手を掛けます。窓からは、教会の鐘が間近に見えます。鐘の音に驚いたのでしょうか、鳥たちが羽ばたきの音を立て、空に向かって飛んでいく様が見られます。 「ようこそ、“天使の翼に抱かれた街”モンテギュールに」 展開ステージ  本シナリオは、登場判定に依存したシナリオ構造です。PLが登場判定を用いてより積極的にシナリオに絡む必要があるでしょう。GMは、PLがシーンに介入し易いよう、ゲストを積極的に用いシーンをコントロールする必要があります。例えば、“背を向けた白鳥”のシーンにアリサを登場させ、“魔印”の登場を促すなどです。 シーン6:有翼の魔神 ●シーンの目的  “沈黙の守護者”が異端の調査に乗り出した場合に発生するシーンです。  “沈黙の守護者”とクラリッサとの交流。 ●進行  “沈黙の守護者”が異端の調査に乗り出せば、異端のしるしを街のあちこちに見いだせるでしょう。本屋で売られる冒涜的な教本(母なる神アーと天使ブリキュリッテとの知恵比べなど)。露店で売られる天使ブリキュリッテの魔除け。街の人たちが口々に口ずさむ詩や祈りの中に織り込まれた、アーと同列に並び立て祀られる天使ブリキュリッテの名前。そして、極め付きは、教会の片隅にひっそりと祀られる、小さな有翼の偶像(天使ブリキュリッテ)。これこそ、偶像崇拝の決定的な証拠です。  天使ブリキュリッテは、ここモンテギュールでは母なる神アー以上に人気を集めているのです。  そして、“沈黙の守護者”は天使ブリキュリッテが(異端の信仰対象であることを理由に)教皇庁より破門された天使(アルカイ)であることを知っています。二年前に滅ぼされたミニアは、有翼の魔神、天使ブリキュリッテを信仰の対象としていました。  なお、“沈黙の守護者”が(調査にのりだし)街に出かける場合、クラリッサが街の案内をかって出ます。クラリッサの口から、天使ブリキュリッテの奇跡に感謝し、朝夕の二度、“モンテギュールの翼”にお祈りを欠かさない老人がいるなど、モンテギュールの街の人々が如何に敬虔な真教徒であるか、語らせてください。 シーン7:白鳥の翼 ●シーンの目的  “背を向けた白鳥”とウィーヴィルとの交流。シナリオ背景の説明。  ウィーヴィルが“背を向けた白鳥”のシーンに割り込んでくるかもしれません。あるいは、マスターシーンとしてシーンをもうけても構いません。 ●進行  ウィーヴィルは病み上がりの“背を向けた白鳥”を気遣い、甲斐甲斐しく世話をします。  ある程度体調が回復すれば教会内の散歩も認めてくれるでしょう(もちろん、ルール的には教会以外のシーンに登場することも自由です。右は演出的な描写に過ぎません)。  ある日、“背を向けた白鳥”は、壁に掛かったタペストリに気を取られます。  白い司祭服を纏った有翼の女性が、頭を垂れる農民たちになにかを諭している絵です。 「天使ブリキュリッテ降臨の絵。お気に召した?」  ウィーヴィルは“背を向けた白鳥”にそう語りかけます。 「天使ブリキュリッテ。この街の守護天使のような存在ね。人々に、この地に都市を築き蛮族たちの侵入に対抗しろと、神託を伝えたの」 「教会から、城壁跡が見えるわよね? “モンテギュールの翼”と呼ばれているのだけれど、天使ブリキュリッテの奇跡の一つと言われているわ」 「この街では、天使ブリキュリッテはとても人気があって、シンボルとか、詩とか、祝詞とかのあちこちに見られるわ。朝夕の二度、城壁にお祈りを欠かさないおじいちゃんもいるの」 「………ねえ、天使ブリキュリッテって、なにかに似ていると思わない?」と、ウィーヴィルは、“背を向けた白鳥”に悪戯っぽく訊ねます。 「答えは、白鳥人。私たちが白い女に化けるときにそっくり。ねえ、天使ブリキュリッテの正体が実は白鳥人だったなんて、ロマンチックだとは思わない?」 「別に、ただ、素敵だと思っただけ。私が、ロマンチックな思いに浸ることは、そんなにおかしい?」 ■ 混乱しないように書いておきますが、ここでのウィーヴィルの問いかけと答えはかなりいい加減なものです。  白鳥人が白い女になったところで必ず白い服装をしているわけではありませんし、なによりも、白い女であるとき白鳥人は翼を生やしていません(一応、このシナリオでは、白鳥人のイメージから、白鳥人は有翼の種族であると解釈しています…この設定が気に入らなければ、白鳥人が白い翼を広げるというシーンはすべてカットしてください)。  しかし、考えてみれば、タペストリーの絵こそいい加減かもしれません。天馬にまたがった白鳥人を有翼の女性として描いた可能性を捨てきれるものではないでしょう。  ここでウィーヴィルが言わんとすることは、すべて寓意的な意味です。 シーン8:白鳥の誘惑 ●シーンの目的  “魔印”とウィーヴィルとの交流。  ウィーヴィルが“魔印”のシーンに割り込んでくるかもしれません。あるいは、マスターシーンとしてシーンをもうけても構いません。 ●進行  ウィーヴィルは、目を付けた“魔印”になにかと言い寄ります。  ウィーヴィルは、司祭という地位を利用し、教会に“魔印”を誘おうとします。ウィーヴィルは、無限の神の愛を説くことでしょう。“魔印”が己が神から見放された存在であることを悔いたところで、ひるむことはありません。 「お茶でも、いかがですか?」 「つかれましたわ。一休み、いたしましょうよ?」 「なにか、悩み事でも? 神はすべてをお許しになられますわ。まずはお話ください」 「神の愛は無限ですよ」 「まあ、そんなに、神の愛を信じることが出来ないと?」 「…なぜ、ご自分がそれほど罪深いお人であると言いきれるのですか?」 「神は、救いを求める人を決して見捨てたりいたしませんわ」 「(ぼそりと、独り言のように)それが、罪だなんて、誰が決めたことなのでしょうか?」 「(優しげに)ええ、貴方が『人である限り、』神は貴方をお見捨てにはなりませんわ」  なお、ウィーヴィルとクラリッサとは同じ教会に所属しています。  二人が同じシーンに登場する場合もあるでしょう。その場合、クラリッサは、尊敬すべき司祭としてウィーヴィルに対して敬意を表します。一方、ウィーヴィルは、クラリッサを楽しいおもちゃとして愛でています。 シーン9:女の戦い ●シーンの目的  シナリオ背景の説明。  “刻まれし者”は登場不可。アリサとウィーヴィルのみ登場。マスターシーンです。適当なタイミング(シナリオ中盤…シーン8:白鳥の誘惑の直後)で起こしてください。アリサはウィーヴィルに嫉妬し、復讐を決意します。 ●進行  場所は、教会の懺悔室。 「次の方」  凛と響くはシスターの声。懺悔室に、一人の女性が入ります。 「あたしは罪深い女です」  淡々と懺悔する女。 「いかように?」  愉快そうに語りかけるのは、シスターの声。 「あなたが…憎々しいのよ、ウィーヴィル!」  まあ、と驚くような声を上げるのは、変わり者のウィーヴィル。 「気にくわないわね。男に、コビを売るような仕草をして…弟を、どのようにするつもり?」 「まあ、アリサ。いつもの貴方らしくない。そんなに、弟が大切? なら、首に鎖を付けちゃえばいいのに?」 「それが出来ていれば、とっくにやっているわよ…ただ、鎖で繋いでも、あの子はあたしのことを振り向いてくれないだけ…」 「ふふ、女の嫉妬? 見苦しいわね」 「…なんとでもお言い。とにかく、あの子に手を出さないで。お願い」 「“闇の御子”魔神の娘アリサともあろうお方がお願いだなんて…らしくないこと」 「………」 「くす。だめよ、私、あの子が気に入ったの。私は、白い女よ。私の性ぐらい、貴方だったら百も承知でしょ?」 「………この、売女!」 「懺悔の時間は、もう、終わりかしら?」  バタンと荒々しく扉が閉められる音。コツコツと、聖堂を後にする足音だけが響きます。 シーン10:魔神の姉弟 ●シーンの目的  “魔印”とアリサとの交流。  アリサから“魔印”の元を訪れることもあるでしょう。マスターシーンとしてシーンをもうけても構いません。 ●進行  アリサは、ウィーヴィルが“魔印”に色目を使うのをなにかと我慢できません。様々な形でちょっかいをかけ、弟に忠告をするでしょう。ただし、闇の鎖に囚われた者として、アリサはウィーヴィルの正体を決して明かそうとはしません。  “魔印”が問いただせば、この街が異端の街であること、異端を調べている騎士が紛れ込んでいること、“背を向けた白鳥”がこの街にいること、街がいま現在、如何に難しい立場に立たされているか(シーン12を参考にしてください)を詩人調に面白おかしく語ります。 シーン11:教会の教え ●シーンの目的  “沈黙の守護者”とメアリ司祭との交流。“沈黙の守護者”が、メアリ司祭にアドバイスを求めた場合、このシーンとなります。メアリ司祭がいるトゥルースとは徒歩で二日ほどの距離です。簡単に行き来できることを強調してください。 ●進行  “沈黙の守護者”はおそらく、メアリ司祭に異端の定義を問答することでしょう。  その場合、メアリ司祭は極めて理性的な判断を下します。  異端とはすなわち、アーの御心に背くこと。教皇庁の決定はアーの御心。ゆえに、教皇庁のによって異端とされたものはすべて異端となります。異端として破門された天使ブリキュリッテを信仰しているのであれば、それはすなわち異端です。 シーン12:悪徳の翼 ●シーンの目的  マスターシーンです。物語は一気に対決フェイズへと向かいます。GMは、PLに情報が十分に行き渡ったと思ったら、このシーンに移行してください。 ●進行  深夜。ボーニュ地方最大の都市、トゥルース。ボーニュ地方の盟主たる地位にある都市です。  その中央に立派な教会があります。教会の宿舎にて、メアリ司祭は一人睡眠をとっています。  音もなく開く窓。一人の女性が、窓から部屋の中に降り立ちます。 「メアリよ、起きなさい」  言われ、目を覚ますメアリ司祭。 「だ、誰ですか!?」  狼狽えるメアリに、ただ静かに笑いかける女性。ばさりという音がして、なにかが広がります。部屋一面に飛び散る白い羽毛。女性の背から翼が広がります。 「………」  呆気にとられ、その風景をただ眺めるだけのメアリ司祭。 「神託が下りました。異端の街、冒涜の街、モンテギュールを、滅ぼしなさい」  それだけを言うと、女性は、広げた翼をゆっくりと羽ばたき、窓から空に飛び立ちます。  GMはPLたちに悪徳の発生を宣言したのち、直ちに、∵神移∵を使用してください。  神託を下した女性こそ、アリサです。 ■ このシーンの経緯は、より正確には以下の通りです。  アリサは嫉妬のあまり、ウィーヴィルを害することを決めました。  アリサはまず、∵神移∵を使用してトゥルースに移動、メアリ司祭の寝室に潜り込みます。  そして、秘技魔法の力を借りて天使の幻影をメアリ司祭に見せます。敬虔な真教徒であるメアリ司祭はそれを天使(アルカイ)のご神託とすっかり信じ込み、軍の出動を決意します。ここで、アリサの悪徳が発動します(49頁のルールには厳密にはしたがっていません)。  続けて、アリサは∵神移∵により、トゥルースから退場します。  そののち、メアリ司祭は、軍の出動をトゥルースの領主や豪商たちに情熱的に訴えかけます。メアリ司祭の美貌と情熱と指導力のたまものにより、領主たちは軍の出動を決意、異端滅ぶべしとの旗印の下、千人もの軍隊が結集することになります。  なお、ここまで極端な行動に移った経緯には、メアリ司祭の指導力のみならず、従来からのトゥルースとモンテギュールとの不仲もあります。モンテギュールは、近年のうちに中継地点として重要度を急速に強め、ボーニュ地方での発言力を高めています。当然、ボーニュ地方の盟主を自称するトゥルースにとっては面白くありません。モンテギュールを抹殺する口実を捜していたのです。 シーン13:異端の翼 ●シーンの目的  マスターシーンです。物語は一気に対決フェイズへと向かいます。  “刻まれし者”たち全員が登場し、“刻まれし者”たちに異端の定義という問いが投げかけられます。 ●進行  “刻まれし者”たちが朝起きると街がなにやら騒がしいです。市民たちはあわただしく城壁と教会との間を駆け足で往復しています。城壁で街の外を眺め、指さし、なにやら叫んでいる市民も数多くいます。  クラリッサは青い顔をして“刻まれし者”に事実関係を告げます。 「トゥルースの軍がモンテギュールを取り囲んでいます!」  ウィーヴィルは、城壁の上で市民たちを鼓舞し、何かと励ましています。  次々に、弓矢や石、槍や盾など、物騒な武具が城壁の上へと運ばれます。  ウィーヴィルは、ただおろおろするばかりのシスターたちを叱責します。  城壁から街の外を眺めてみると、千はくだらない軍勢が街を取り囲んでいます。トゥルースの旗に混じって、三つの翼を組み合わせた紋章旗がはためいています。どうやら、軍を動かしているのはメアリ司祭のようです。 ■ “沈黙の守護者”に一人のエキストラが近づいてきます。エキストラはメアリ司祭が放ったスパイです。スパイは軍への合流を“沈黙の守護者”に薦めます。 ■ もし、“魔印”がアリサとの会話を望むのであれば、GMはアリサを通じて、この状況の説明をさせてください。もちろん、アリサは、シーン12について(自分の企みが引き金になっていること)は絶対に話そうとはしないでしょう。  やがて、軍から使者が街の門の前に出てきます。使者は書状を読み上げます。内容は、モンテギュールが犯した罪の数々とその贖罪を求めるものです。偶像を直ちに破壊し、一日の内に異端者を軍に引き渡せという内容です(どう考えても実行不可能です)。もし、この命令に背いた場合、神の名のもとにモンテギュールを滅ぼすとのことです。  使者の口上を聞き、クラリッサは思わず気絶しかけ、倒れ伏します。  ウィーヴィルは、使者の口上を聞き、絶望的ながらも戦いを決意します(戦士の魂を父アーグリフのもとへ連れていくのが白鳥人の使命です)。ウィーヴィルは、市民に徹底抗戦を訴えることでしょう。己の信仰を捨て、天使ブリキュリッテ様をお見捨てになるのかと涙ながらに訴えかけます。市民は、ウィーヴィルの演説に心打たれ、徹底抗戦を決意することでしょう。  一方、メアリ司祭も、使者の口上に答えないモンテギュールを見て、モンテギュールの完全なる破壊を決意します。  指揮官は、メアリ司祭に問いかけます。 「まだ、街の中には旅の者、異端ではない者が数多くいます。彼らと異端とをいかにして見分けるべきでしょうか?」  この問いかけに対し、メアリ司祭はゆっくりと、確信に満ちた口調で答えます。 「すべてを殺しなさい。神は神のものを知りたまいます」  市民が戦いに備える様を見て、クラリッサは絶望に打ちひしがれます。  なぜなら、神は無限の愛を唱えたのに、天使ブリキュリッテへの信仰は異端として否定され、同じ真教徒同士が戦うことになるからです。  クラリッサは、もう、自分の信仰を信じることが出来ません。“刻まれし者”に問いかけます。 「異端とは………なんですか?」 ■ “刻まれし者”たちはこの問いかけに対しなんと答えるでしょうか?  その回答が絶望的であれば、クラリッサは前世を思い出します。 「アーよ、これがわたしの宿命ですか? 二度、アーを裏切り、異端へと走ることがわたしの宿命ですか?」  こうなってしまえば、“沈黙の守護者”がいかように弁解しても、クラリッサは聞く耳をもてないでしょう。 「嘘つき…ならば、何故、“沈黙の守護者”さんはミニアを滅ぼしたのですか? 私が異端だったからではないのですか? もし、そうでないとすれば、あなたはなんですか!」  泣き崩れるクラリッサをウィーヴィルが抱き寄せます。 「ええ、そうよ、クラリッサ。貴方は異端だわ。アーは貴方を御見捨てになったわ。貴方の魂はもう、救われないの…いいえ、アーは、はじめから貴方を救うつもりなど無かったのでしょう。貴方に異端の宿命を負わせたのですもの。…もてあそばれたことが、悔しい? ならば、復讐なさい。アーと、その下僕たちに」 「認めなさい、すべてを。受け入れなさい、闇の接吻を」  そう言って、ウィーヴィルはクラリッサの唇を奪います。クラリッサもまた、そんなウィーヴィルを受け入れてしまいます。クラリッサは、ウィーヴィルの闇の接吻を受け入れ、“殺戮者”となります。ウィーヴィルが所有する聖痕のうち三つがクラリッサに宿ります。 ■ もしここで、“刻まれし者”たちが∵紋章∵を使うなど、うまく立ち回って軍隊との戦闘を避けることが出来れば、クラリッサは闇の誘惑に負けることはありません。  この場合、ウィーヴィルは、冷たく笑います。 「そう、“背を向けた白鳥”。これが、貴方の答え?」「あくまで、私の邪魔をするというのね?」 「“魔印”よ。神に見放されし者よ。それでもなお、神の愛を望むというの? 私の愛を拒むくせに?」 「どこまでも私たちの邪魔をするというのね、“沈黙の守護者”」 ■ ちなみに、モンテギュールの城壁は、遺跡とも呼ぶべき城壁であり、街の防衛機能としてはまともに機能しないことでしょう。戦闘を行うとすれば一方的虐殺となるでしょう。 対決ステージ シーン14:有翼の天使 ●シーンの目的  倒すべき“殺戮者”との戦闘。シナリオのクライマックスです。 ●進行  “刻まれし者”は、己の尊厳と信仰とモンテギュールのために、ウィーヴィルおよびクラリッサと戦うことになるでしょう。ここまでに、語るべきことはすべて語り尽くしたはずです。あとは、殺しあうだけです。 ■“変わり者”ウィーヴィル アルドール=フルキフェル=グラディウス 体格24:重武器3LV 敏捷20:運動3LV     回避3LV 共感12: 知性14:自我3LV     隠密2LV 希望10: HP:78 AP:19 武器:ヘビースピアI+9 防御力(ガードローブ、オープンヘルム、革マント)S6、I4、C2 ●特技 ≪苦痛耐性≫5LV HP増強(計算済み) ≪突破≫ 判定値:17、クリティカル値:1、代償:F エンゲージを無視して全力移動 <重武器>≪純潔の槍≫1LV≪修羅≫≪旋風撃≫≪盾砕き≫≪粉砕剣≫≪重撃≫ 判定値:6、クリティカル値:3(6)、代償:D4 ダメージ:I+18+D10(魔法ダメージ) +1D、武器の防御修正−D10(永続)、防具の防御修正−2(永続)、リアクションのクリティカル−3 <重武器>≪純潔の槍≫1LV≪修羅≫≪旋風撃≫≪剣圧≫≪粉砕剣≫≪重撃≫ 判定値:5、クリティカル値:3(5)、代償:D4 ダメージ:I+18+D10(魔法ダメージ) +1D、範囲攻撃、防具の防御修正−2(永続)、リアクションのクリティカル−3 <回避>≪見切り≫≪裏切りの代償≫ 判定値:17、クリティカル値:1、代償:F、D2 +1D、ダメージ−5 <自我>≪獅子心≫≪裏切りの代償≫ 判定値:11、クリティカル値:4、代償:H3、D2 ダメージ−5 <自我>≪裏切りの代償≫ 判定値:14、クリティカル値:1、代償:D2 ダメージ−5 <自我>≪瞬間集中≫≪気合い≫ 判定値:6、クリティカル値:1、代償:D2 2nd、次のメジャーアクションにクリティカル+3 ●奇跡 ウィーヴィルが元来保有する奇跡 ∵絶対攻撃∵ ∵模倣∵ ∵死神の手∵ ●異形  司祭服を羽織り、前をはだけさせた有翼の裸の娼婦。白く、透き通った翼はその裸を隠すどころか、一層に扇情的な雰囲気を醸し出す。 ■“異端の娘”クラリッサ ファンタスマ=マーテル=アングルス 体格09: 敏捷08: 共感15:祈念3LV     交渉2LV 知性13:自我3LV 希望10: HP:18 AP:08 防御力(ガードローブ)S3、I2、C1 ●特技 <自我>≪運命の少女≫≪加護≫≪虚心≫ 判定値:8、クリティカル値:6、代償:DC +1D、<自我>で避け ≪聖鎧≫≪聖光≫≪運命の少女≫ 判定値:7、クリティカル値:3、代償:DCRR 実ダメージ−3(−5)、HP+D10(+2D10) ●奇跡 クラリッサが元来保有する奇跡 ∵再生∵ ∵真名∵ ∵天真∵ ●異形  偶像に祈る女。その祈りが届くことは決してない。 ■ウィーヴィルとクラリッサとが保有することになる他人から奪った奇跡 ∵神移∵ ∵紋章∵ ∵不死∵ ∵無敵防御∵ ∵呪縛∵ ∵因果応報∵  その他、“刻まれし者”たちの強さに合わせて調節してください。 終局ステージ シーン15:天使の翼に抱かれた街 ●シーンの目的  今宵の物語はここまで。この物語に相応しい最後を飾ってください。 ●進行  聖痕の解放が行われます。  ここで、GMは以下のように聖痕の解放を読み上げてください。 「アルドール、フルキフェル、グラディウス、ファンタスマ、マーテル、アングルス、ウェントス、フィニス、アダマス、レクス、アクア………そして、コロナ。さて、どうしましょう?」  これが、このシナリオにおける、“刻まれし者”たちの最後の決断です。  “刻まれし者”たちの尊厳値が回復します。  尊厳値が0以下になった“刻まれし者”は、次のセッションから“殺戮者”として“刻まれし者”たちの前に立ちはだかることになります。GMは、尊厳値が0以下になった“刻まれし者”のキャラクターシートを、そのPLから没収してください。  最後に、後日談です。  ここはみなさんにお任せします。どうぞご自由に。 ■ 最後に以下のシーンを読み上げてください。シナリオの締めとします。  “刻まれし者”がモンテギュールを立ち去り、モンテギュールを見渡せる丘に通りかかったとき、ひらひらと、綿雪のような羽毛が視界を遮ります。  驚いた“刻まれし者”が振り返ると、純潔の白。白い司祭服を身につけ、白い翼を広げた女性が一人、モンテギュールの教会の頂きに立っています。遠くであるはずなのに、その姿はすぐ間近にあるかのように、女性の姿はくっきりと見えます。女性は、翼を広げ、ゆったりと、飛び去ります。空に向かって。北へ向かって。  このシーンは、モンテギュールが滅んでいるか否かに関わらず、発生するシーンです。  また、有翼の天使(?)を目撃するのは、“刻まれし者”たちではなく、エキストラである旅人でも良いでしょう。 有翼の天使は、静かに飛び去った シナリオのポイント  難しいシナリオです。  シナリオが一本道であるにもかかわらず、シナリオ上、セッションを誘導するような仕掛けに乏しく、マスタリングに苦労するシナリオでしょう。  GMは、ゲストを資源駒(トークン)と捉え積極的にシーンに介入させPLのモチベーションをコントロールする必要があるでしょうし、PLは因果律や因縁を手がかりにより積極的にシーンに介入する必要があるでしょう。そこら辺を気を付けてください。  また、このシナリオのテーマは、日本人になじみが薄い異端ものです。プレイングには十分に注意してください。ポイントは結局、正統と異端との差がなんであるのか、ということです。無いと言えば全くありませんが、有ると言えば致命的な差がそこに存在するのです。 デザイナーズノート  というわけで始動いたしました「らんぎるプロジェクト」第一弾、「モンテギュールの翼」いかがだったでしょうか。  アルカナは、『LAND of The GUILTY』の登場でその立ち位置を劇的に変化させました。世界的にも珍しい、本当に英雄譚をプレイできるゲームがここに誕生したのです。  さて今回は、いきなりダークなお話。異端ものです。いきなり、火塚ばりばり120%なシナリオでしたが、いかがだったでしょうか。わかりにくいところとかありましたら、是非、気軽にご質問をしてください。