◆新作シナリオ6本
「ケルファーレンの麦畑」
●イントロダクション
刈り入れられた麦畑。累々と横たわる、村人たちの死体。誰もが苦しげな表情をしている。
すべてが死に絶えた村。蠢く、影。死体のひとつが、軽く、けいれんする。生きているのだろうか。
「うう………」
うめき声。少女の声だ。少女が、そこに横たわっていた。嘔吐物にまみれくしゃくしゃになった顔。肉は爛れ、腐れ、蛆が湧いている。
「うう………」
なおも、少女はうめく。息も絶え絶えだ。いままで、生きていたことすら、奇跡なのだろう。少女の隣には、年若き女性と、小さい少年。おそらく、姉と弟。ふたりとも、虚ろな、死に絶えた目をして横たわっている。少女は、うめき、ふたりの、動かぬふたりの瞳を見て、自らの瞳に絶望の色を浮かべる。
「うう………」
少女の身体に陰りが。
いつの間にか、老人がひとり、少女を見下ろしている。…片目に眼帯をしている、隻眼の老人だ。
「娘よ。死にたくないか? 生きながらえたいか?」
「うう………」
少女は、肯定とも否定ともつかぬ声でうめく。
「よかろう。ならば、翼をくれてやろう。ここから抜け出すための、翼をくれてやろう」
そう言って、老人は、少女に手をさしのべる。老人の手が、ぼんやりと、妖しく光る。そこには、不思議な形をした紋章がひとつ、浮かんでいた。
●推奨因果律
背を向けた白鳥、名君の証、背徳を狩る者など、アーグリフやボリヴァドゥス関連の因果律
●推奨導入
紅公ガイの家臣、聖職者、騎士、傭兵、芸人など
「セノビアの異端」
●イントロダクション
アイセン司祭領にて。囁かれるうわさ話。マレーヌ卿が、捕囚の身…良い気味だ、ついに天罰がくだったのだろう、などなど、宜しくないひそひそ話が成される教会の中庭を一路歩く。
薄暗い廃教会。そこに、人影が。
「ご苦労。さっそくだが、貴殿に任務をひとつ与える」
「教会でも既に噂になっているだろうが、マレーヌ枢機卿が、ミンネゼンガー公国、セノビアにて補囚の身となった。罪状は、異端という話だが…これは、どう見ても宗権侵犯だ。アイセン領と聖母殿、両方から近々正式に抗議文も送る予定となっている…が、そんなことは、聖母殿の老婆どもにやらせておけばよい」
「貴殿の任務はひとつ。マレーヌ卿の暗殺、だ」
「不服そうな顔だな…わかっているだろうが、マレーヌ卿は、我ら聖グラディウシア騎士団でも特殊な地位についている。これで仮に拷問で口を割れば、我が騎士団にどのようなダメージが降りかかるか、わかったものではない。かつての“血染めの聖母座”事件の再現にもなりかねない。もはや、一刻の猶予もないのだ」
「マレーヌ卿が、我ら騎士団の協力者であることを知る者は少ない。我と、貴殿、それに、我らが首領様だけだ。細心の注意をもって、この任務を遂行せよ」
●推奨因果律
沈黙の守護者など、宗教系因果律
●必須導入
聖グラディウシア騎士団、新派聖職者、旧派聖職者
「聖アルゲンティアに祝福あれ」
●イントロダクション
「聖アルゲンティアの祝福あれ」
画面暗転。
決闘シーン。にらみ合う聖痕者たちと殺戮者。
殺戮者、優しくほほえみ、応える。
「聖アルゲンティアに祝福あれ」
殺戮者は、ゆっくりと剣を掲げ、厳かに宣言する。
「母なる神アーと聖マーテルとの御名において、捧げよ聖痕、今宵は殺戮の宴なり」
●必須因果律
裏切りの救世女
●推奨導入
騎士、聖職者、賞金稼ぎなど
「リンデンブルクの騎士」
●イントロダクション
森の中、三日月、森を疾走する男。手には抜き身の剣。後ろを振り返り、振り返り、走る。服のあちこちが破け、血が滲む。全身、泥だらけだ。どうやら、一心不乱に逃げているらしい。
黒馬に跨り、森を疾走する鎧武者。森の中を駆けているとは思えないほど、その足並みは軽やかだ。
男は、逃げる。逃げる、逃げる。…ざ という音と共に、男の上空を何かが駆ける。男の頭上に影が差す。軽やかに、着地する何か…黒く、巨大な馬だ。馬には、鎧武者が跨っている。
「ひ!」
男は、仰天し、ひっくり返る。腰が抜けたようだ。
「来るな! 来るな! 来るな!」
男は、半狂乱になって剣を振り回す。
それを、無感情に見つめる、鎧武者。と、鎧武者は、何かを男に投げつける。無様な叫び声ともつかぬ声を漏らす男。見ると、投げつけられたそれは、男たち五人の生首。髪を結わえ、ヒモを通しひとつにまとめている。
今度こそ、男は声にならない叫び声を上げる。
鎧武者は、無造作に近づき、右手に持つランスを、男の喉元に突き付け、一気に差し貫く。
●推奨因果律
特になし
●推奨導入
騎士、聖職者、傭兵、吟遊詩人など
「リューデスバーデンの槍試合」
●イントロダクション(盗まれた、聖なる槍)
久しぶりに訪ねてみると、ブロムハイム城が荒らされていた。
唖然としていると、馬車の音。気がつき、外に出ると、そこには、四頭立ての巨大な馬車。
「聖地が汚されました。正しき心を持たぬ者によって、槍が盗まれたのです。槍は汚され、その聖なる輝きを失いました。盗んだ者の名は、“盗賊騎士”フォルケンハイム」
●推奨因果律
聖なる盾、悲しき恋のさだめ、許されぬ愛、最強の騎士など、騎士系因果律
●推奨導入
騎士、聖職者、紋章官、貴婦人
「キャスルハイムの守護天使」
●イントロダクション
天使像が動いたという奇跡…そして。
●推奨因果律
宗教系因果律
●推奨導入
聖職者など
「ノーゼンホルムの魔女」
●イントロダクション
魔女アウリッチの微笑み。貴方はそれを忘れない。蒼く輝く満月の日。
●推奨因果律
背を向けた白鳥など、アーグリフやボリヴァドゥス関連の因果律
●必須導入
聖職者、騎士
◆旧作3本
「モンテギュールの翼」
●イントロダクション
“背を向けた白鳥”は教会の鐘の音で目が覚めます。
起きてみるとベットの上。
「ごきげんよう、“背を向けた白鳥”? 良い夢は見られた?」
“背を向けた白鳥”に声がかかります。声の主の方を振り向くと、そこには女性が一人。
真教の司祭服にその身を包んだ………ウィーヴィル、“背を向けた白鳥”の姉です。“背を向けた白鳥”は、ウィーヴィルの通り名、“変わり者”という呼び名を思い出すことでしょう。
「貴方はね、“背を向けた白鳥”、とっても似ているのよ、私と」
ウィーヴィルはそう言って、窓の方に歩み寄り、窓の手すりに手を掛けます。窓からは、教会の鐘が間近に見えます。鐘の音に驚いたのでしょうか、鳥たちが羽ばたきの音を立て、空に向かって飛んでいく様が見られます。
「ようこそ、“天使の翼に抱かれた街”モンテギュールに」
●必須因果律
006:背を向けた白鳥
042:沈黙の守護者
091:魔印
●因縁
006:“変わり者”ウィーヴィル、“魔印”
042:クラリッサ、“背を向けた白鳥”
091:“闇の御子”アリサ、“沈黙の守護者”
「ヴァングリートの狼」
●イントロダクション
夢を見た。懐かしい、幼少の頃の夢を見た。
己が住まう館とその庭が世界のすべてであった頃の夢。
「なにをしているの?」
その人は、ぼくに、そう語りかけてきた。おかあさんのような優しい声だった。
振り返ると、そこにその人がいた。蒼いドレスを纏い、蒼い帽子を被り、蒼い日傘を差していた。
「なにをしているの?」
その人はもう一度、ぼくに語りかけてきた。優しい、声。
名前は覚えていない。顔も、ぼんやりとしか思い出せない。
ただ、確かなことは、その人からいろんなことを教わったということだった。
木の登り方。駆けっこの仕方。川の泳ぎ方。剣の扱い方。馬の乗り方。弓矢の撃ち方。水の中で息を止める法。鳥のように跳躍する法。傷を化膿させない法。様々な魔術と、魔術を退ける術すら教わった。
ある夜、ぼくが寝室で寝ているところにその人が訪ねてきた。どうやって寝室に入ってきたのか驚くぼくに、「目を瞑りなさい」と語りかけてきた。ぼくは、目を閉じた。
次に、「目を開けなさい」と語りかけてきた。ぼくは、目を開けた。
そこは、寝室ではなかった。壮大な、どこかの宮殿。その、王座の間にぼくはいた。そよぐ風は、ここが自分の故郷ではないということを教えてくれた。
「あれをご覧なさい」
その人は静かに告げた。
そこには、大きな一枚の肖像画があった。剣を携えたりりしい青年王の肖像。
「あの方こそ、伝説に名高いルムスラント一世。忠義に篤いマーグレット王子、その人です。………そして、貴方のご先祖様でもあります」
それが、ぼくを訪ねてきてくれた最後の日だった。
…
……
………。
「目覚なさい。今こそ、その出自の証を立てるとき」
私は、目が覚めた(“英雄の末裔”は、その声で目が覚めます)。
●必須因果律
006:背を向けた白鳥
059:血の呪縛
098:英雄の末裔
●因縁
006:ロフト、レーベンヴィント、“血の呪縛”
059:ヴァングリートの狼、“英雄の末裔”
098:ブラウエンヴィント、“背を向けた白鳥”
「ギーゼブルクの空」
●イントロダクション
“放浪の歌”が野営をした夜の出来事です。
深夜、天空に近いギーゼブルク城のテラスに佇む、ひとりの貴婦人。
貴婦人は、そっと目を瞑り、静かで伸びやかな声で歌い始めます。
空を掛ける星、夜空を突き破り、輝く空へと一直線に伸びます。
それを幾重にも取り囲む、有翼の人々。
光はやがて、天空にある城に飛び込みます。
地上から、天空の館へと伸びる光の柱が見えます。
まばゆい光の柱は夜空を照らします。照らされた夜空に浮かぶ、一隻の飛行船。
舵を操りながら、その光を見つめるひとりの少女。
「聖痕が、空に届いたのね………」
貴婦人の歌が静かに流れる夜の出来事です。“放浪の歌”は、誰が唄ったか知らないその歌を、確かに聴きました。“放浪の歌”の卓越した記憶力は、確かにその歌を正確に覚えました。
しかし、最後に一節、それだけを覚えることはできませんでした。歌い手が唄わなかったその一節。それだけが、“放浪の歌”にとって気にかかるところです。
●必須因果律
052:名もなき母の加護
060:天空からの帰還者
083:夜の騎士、女性キャラ限定
101:放浪の歌
●因縁
052:エアルヴィント、“夜の騎士”
060:カエラム、“放浪の歌”
083:エアルヴィント、“天空からの帰還者”
101:グスタフ、“名もなき母の加護”